Haiku in English on Sunday (236) 古池や蛙飛びこむ水の音

日曜日は俳句の紹介と英訳。
2回にわたってラフカディオ・ハーン(小泉八雲)について触れました。
1890年の来日以来,日本に住み,帰化し,日本について書きました。

この写真はハーンと妻の節子(セツ)さん。小泉は節子さんの姓です。
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節子さんは「思い出の記」にこんな文章を残しているそうです。

「(八雲は)発句を好みまして,沢山覚えていました。これにも少し節をつけて廊下などを歩きながら,歌うように申しました。自分でも作って芭蕉などと常談を云いながら私に聞かせました。どなたが送って下さいましたか『ホトトギス』を毎号頂いて居りました。」

残念ながらハーンが作った俳句はほとんど残っていないようです。

Exotics and Retrospectives「異国情緒と回想」(1898年)では
あまりにも有名なあの俳句を英訳しています。
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古池や蛙飛びこむ水の音  松尾芭蕉
(ふるいけやかわずとびこむみずのおと)

俳句と言えばこの一句というような芭蕉43歳の代表作。
カエルはまだ早いですが春の季語です。
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この句の何がすごいのか?

それは,和歌の世界では「カエル=鳴き声」「カエル=山吹」という
日本の常識を打ち破ったところにあります。


詳しくは過去記事で → こちら

ラフカディオ・ハーンは俳句を sensation-picture 「感情画」として
イメージの喚起力が特色だと言っているそうです。

ラフカディオ・ハーン訳はこの通り。

Old pond,
flogs jumped in
sound of water


おもしろいのは,ハーンはカエルを複数として訳しています。

ポチャ  ポチャ  ポチャン ・・・という感じでしょうか。

また,最近の芭蕉研究では,「古池」は具体的な特定の池ではなく
芭蕉の想像上の産物,芭蕉の心の中の「古池」という読み方を
ときどき聞きます。

カエルが一匹か複数かはわかりませんが,
カエルが水に飛び込む音が聞こえた。
そこで芭蕉は,いつか昔見た池を思い出した・・・。


私は一匹で英訳してみます。

古池や蛙飛びこむ水の音俳句  松尾芭蕉

The old pond
A frog jumps in...
The sound of water



ハーンは過去形で訳しました。
動作が終わったことを表し,余韻が出ます。

現在形で訳し,臨場感を持たせるのが一般的なようです。

この記事へのコメント

2017年02月26日 08:27
おはようございます。

 蛙が単数か複数か、過去形か現在形か、そのどちらかによって思い起こす情景が異なってきますね。
 英語ではそれをはっきりさせなければいけないのだろうけれど、それをあいまいなままにしておく日本語というのも、不思議な言語ですよね。
2017年02月27日 06:26
あきあかねさん
おはようございます。
単数,複数,それに時制は確かに日本語はあいまいですね。逆に英語は論理的だと言われるのはそのあたりなんでしょう。英語に訳すことは解釈することなんですね。

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