Haiku in English on Sunday (429) 生きるの大好き冬のはじめが春に似て

日曜日は俳句の紹介と英訳。
今年も残すところあと2か月を切り,昨日は立冬でした。
仙台から見える蔵王連峰には雪が積もりました。

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立冬からしばらくの時期は「初冬」ですが,俳句の世界では「しょとう」という言い方は収まりがよくないので,「はつふゆ」と読むことが多いです。

他にも季語としては「冬初め」「冬浅し」などがあります。


生きるの大好き冬のはじめが春に似て  池田 澄子
(いきるのだいすきふゆのはじめがはるににて)

池田澄子さんはこのシリーズ最多の12回目の登場です。

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「池田澄子百句」より。句集「空の庭」所収。

池田澄子百句 - 稔典, 坪内, 中之島5
池田澄子百句 - 稔典, 坪内, 中之島5

多くの文学者が生きることの意味を問うてきているわけですが,こんなにストレートに「生きるの大好き」なんて言われたら照れてしまします。

しかも,「好き」ではなく「大」まで入れて「大好き」,上五(5音)に8音を用いる贅沢さ。
この贅沢さで,この句は半分成功しています。

普通,冬の到来は陰鬱なもの。それが「生きるの大好き」の後に来ると,冬もまたいい季節じゃないかと思ってしまいます。

この句の季語は「冬のはじめ」(初冬)ですが,裏にもう一つの季語が隠れているような気がします。
それは「小春」「小春日和」

「冬のはじめが春に似て」とはきっと小春日和のような1日だったのでしょう。
「小春」とはよくクイズにも出ますが,冬なのに春のような日を表す冬の季語。

池田さんはきっとそんなストレートな季語よりは,散文的な表現を用いて「小春日和」を一句の中に隠しこんだのでしょう。

凡人の私なら「生きるのが大好きになる小春かな」とでもなっていたでしょう。


では,英訳してみます。

生きるの大好き冬のはじめが春に似て  池田 澄子

I like to live!
Early winter is just like
Spring!



英文も散文的にしました。

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