Haiku in English on Sunday (537) おでこ全開木枯を帰りくる

日曜日は俳句の紹介と英訳。
12月に入りましたが,よくこの時期に「木枯らし1号」が吹いたとか吹かなかったとか,そのようなニュースを目にします。
「木枯らし」「凩」は冬の季語で,晩秋から初冬にかけて吹く季節風で,木を枯らし,落葉を誘います。
これは先週,福島の岩角寺で撮った大きな銀杏の木。落葉が進んでいます。

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でも,「木枯らし1号」となると,近畿と東京でしか観測・発表しません
それぞれ認定の条件は異なりますが,風速8メートル以上というのは共通です。

今年,近畿地方では観測されましたが,東京では11月末日までとしているために,2年連続木枯らし1号の認定はありませんでした

おでこ全開木枯を帰りくる  辻 美奈子
(おでこぜんかいこがらしをかえりくる)

長谷川櫂著「四季のうた 美しい日々」より。

四季のうた-美しい日々 (中公文庫 は 65-9) - 長谷川 櫂
四季のうた-美しい日々 (中公文庫 は 65-9) - 長谷川 櫂

辻美奈子氏は昭和40年(1965年)東京生まれの俳人。
昭和58年「沖」入会。平成5年第21回「沖」新人賞受賞。
平成17年,第28回俳人協会新人賞受賞。現在「沖」編集長。

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今日の句は彼女の第3句集「天空の鏡」に所収。

天空の鏡 - 辻 美奈子
天空の鏡 - 辻 美奈子


一読でおもしろい句だとわかります。この句の命は「おでこ全開」でしょう。
木枯らしに負けまいと,前髪が吹き上げられても,おでこがむき出しになっても帰宅を急いでいます。

長谷川氏の解説では「自分をおもしろがる心が俳句」とありますが,この第3句集のころは,子育ての時期と重なるそうで,おでこはお子さんのものと考えることもできます。

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では,英訳してみます。

おでこ全開木枯を帰りくる  辻 美奈子

Came back home
With my forehead full open
Against biting wind



自分のおでことして訳しましたが,my を a などにしてぼやかしてもいいでしょう。

この記事へのコメント

2022年12月04日 08:04
おはようございます。

 面白い句ですね。情景と心情が一瞬で目に浮かびます。

 私には若い女性の気持ちなどは分からないのですが、十代の女性は「おでこ全開」を”恥ずかしい”と思うようですね。何故なのでしょうね?

 以前見た動画のワンシーンなのですが、「私は何処の国から来たのでしょう?」と尋ねたのに対して、ホテルマン(他しかニューヨークのホテルだと思いました)がちょっと考えて、「日本人でしょう」と当ててしまいます。「なぜわかったの?」と、重ねて問いかけたのに対して、「だって、日本人の若い女性は大抵前髪を作っているでしょう。貴女もそうだったから」と、答えたのです。
 確かに、ハイティーン以上の女性で前髪を作るのは日本人に多いような気もします。それにしてもホテルマンの観察力はするどいなあ、と思った次第でした。
 ちなみに、問いかけをしたその女性はオーストラリアや英国に長く住み、彼女の英語には日本語訛りは全然ありませんでした。
2022年12月10日 05:29
あきあかねさん
おはようございます。コメントへの返信遅れてすみません。
記事の更新もできずに仕事と睡眠を繰り返していました。
おでこ1つとっても日本人女性にはこだわりがあるんですね。映画の件もおもしろく読ませていただきました。どこかバブル期のキャリアウーマンを思い出しました。

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