浮世絵に見る年の暮れ(4) 天保の雪華文様

新年には初詣に行く予定はありますか? 私は今年も近所の神社に行こうかな。
さて,今日の浮世絵は渓斎英泉の「江戸の松名木尽 押上妙見の松」

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この女性はお歯黒をしているので既婚者,でも眉があるので若い女性です。
上にお札がかかった「妙見の松」とあります。

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手を拭いているので,参拝前に手を清めたのでしょう。

この「妙見の松」とは「柳島の妙見さま」と呼ばれるお寺で葛飾北斎が篤く信仰したお寺としても知られます。
そこには妙見大菩薩が舞い降りたという大きな松がありました。
(下は広重の「柳島妙見」)

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きっと女性は安産か家内安全か何かをお祈りに来たのでしょうね。

さて,この女性,ちょっと気になることがあります。
着物の柄,これって・・・?

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これって,雪の結晶!?

江戸時代(天保)に雪の結晶模様を江戸の人々は知っていた?

これにはある武士が大きくかかわります。
この人は土井利位(どい・としつら)。1789年三河で生まれ,のちに養父の跡を継ぎ(現在の茨城県)古河藩の藩主となります。

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彼は,日本で初めて雪の結晶を顕微鏡で観察した人物として知られています。

このころはもう日本に顕微鏡がオランダから入っていました。
これはオランダからの知識をまとめた「紅毛雑話」。

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土井利位はなんと20年にわたり雪の結晶を観察し,雪の結晶を「雪華」と命名しました。

そして,その観察結果を「雪華図説」(天保3年,1832年)にまとめて出版しました。
8年後には「続雪華図説」も出版。

9sekka3土井利位雪華図説.jpg

雪の結晶はパターンこそあれ,同じ模様は2つとないそうです。

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土井の結晶図(雪華文様)はテキスタイルパターンとして取り入れられ,雪華文様の衣装が流行しました。

歌川国貞が描いた佐野喜こと商人・佐野屋喜兵衛も雪華文様を着ています。

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歌川国芳はネコに雪華文様を着せました!
右側のお師匠さんの着物には猫の足跡(肉球)と雪華文様を組み合わせたものが見えます。

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土井利位が藩主を務めた古河藩では,他の藩に雪の結晶入りの印籠をプレゼントしたそうです。

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なんかモダンなデザインだなあ。

ちなみに,茨城県古河市ではこの雪華文様を歩道や多くの学校の校章に取り入れているそうです。

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ほとんどの学校が六角形の模様を取り入れている。

仙台はまだほとんど雪が降っていないので助かっていますが,大雪被害のところにはお見舞い申し上げます。

年末年始,寒波来ないでほしい・・・。
スキー場の人にとっては降ってほしいところでしょうが。

この記事へのコメント

2022年12月29日 08:05
おはようございます。

 今のところ元旦の天気はそこそこ良さそうですよ。私も近所の神社に元朝詣りに行く予定でいます。

 煤払いは二日掛けましたが、なんとか終わらせました。昨日はお正月物を買って来て、お飾りもも済ませました。明日は年越しの膳と正月膳の準備をする予定でいます。大した物は作らないのですけどね。
 あとはブログ記事の正月の準備ですが…、終わらせられるかなあ…
2022年12月29日 08:17
そうそう、

 一昨年の暮れに私、「お年取り」という記事を書いたのですが、ここ数日、この記事へのアクセスが激増しています。12月に入った頃から、毎日2~5アクセスが有ったのですが、ここ数日は数十ビューです。昨日は100近いビューが有りました。年末年始の行事の確認なのでしょうかね。最近は核家族が多いので、こうした行事の伝承が薄れているのかもしれませんね。
2022年12月29日 23:55
あきあかねさん
こんばんは。本当にまた1年が過ぎようとしています。
「お年取り」もう1度読ませていただきましたが,いろいろな語で検索してたどり着くのでしょう。私もなぜこの記事が急にアクセス増なんだろうと思うと,たいていはテレビで扱ったネタだからです。
このように百科事典のような記事は残しておけば役に立ててもらえるのでいいですよね。きっと大いに参考にしているはずです。

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