浮世絵に見るお正月(3) 江戸のカレンダー

年末から正月にかけて新しくするものと言えばカレンダーですが,100円ショップにあれほど置いてあったカレンダーも,年末に行ってみたらほとんど売り切れ状態。
さて,これは江戸時代の壁掛けカレンダー

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今年と同じウサギ年(兎年)なのかなあとは想像つきますが,どこがカレンダーなのか?

江戸時代は,現在のグレゴリオ暦導入前の太陰太陽暦を使っていました。
大の月(30日)と小の月(29日)がありましたが,大の月と小の月は毎年変わるのでたいへん!

そこで大小暦と呼ばれる暦(カレンダー)が必要となりました。

先ほどのウサギのカレンダーをよく見ると,ウス(臼)の下のほうを見てみましょう。

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大の月がウス(臼),小の月がウサギ(兎)を表すようです。

実はそれぞれのイラストには正月(1月)から12月まで数字が隠れていたのです。

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わかりましたか。

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この年は・・・
2・4・8・10・11・12月が大の月。
正(1)・3・5・6・7・9月が小の月。


毎年変わるのでは,どこかに貼っていないと忘れちゃいますよね。

その月が何日で終わるのかは,月払いや年末払いが多かった江戸の町人にとっては重要。
月をまたぐと利息を多くとられたり,質屋では流されたり。

これは寛政2年の大小暦。わかりやすいですね。

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イヌがいるのでイヌ年(戌年)です。
大の月が太字で示されています(1・3・4・6・9・11月)。

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これはネズミ年(子年)の大小暦

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もちろん,大きな「子」の字が大の月

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でも,なぜこんな手の込んだことをしたのでしょう?

暦の売買は江戸幕府および陰陽道の土御門家によって厳しく規制されていたんだそうです。

そこで大小暦は金品の伴わない贈答品として作成され,相手にどんな暦を贈るかでセンスを問われたようです。

また,これは鈴木春信の「巫女の踊り」

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これも大小暦で大の月を表しています

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シンプルで色も少なかった刷り絵もこの大小暦によって色数が増え,デザインが複雑になり,浮世絵の発展に大きく寄与したそうです。

最後に,現在,小の月は「2・4・6・9・11月」と固定されています。

よく「西向く士(さむらい),小の月」なんて覚えますが,これは天保8年(1837年)の大小暦を覚えるために作られた語呂合わせなんだそうです。

この記事へのコメント

2023年01月05日 08:02
おはようございます。

 最初の卯年の暦ですが、江戸時代によく使われた字体を図象化していますね。ですが、「正」と「五」は崩し字ですので、現代の方には分かりにくいかもしれませんね。

 退職して付き合いが減ってからは、カレンダーも自前で準備しなければならなくなりました。一昨年は油断をして12月に入ってからカレンダーを求めに行ったものですから、値段が高めのものしか残っていなく、また望みの大きさのものが見つかりませんでした。なので、昨年は少し早めに11月中に準備しました。
2023年01月07日 06:29
あきあかねさん
おはようございます。
カレンダーはここには七十七銀行のを貼って,ここには○○屋さんからもらうのを貼って,なんて決まっていたのに,最近はもらえなかったり,100円ショップでいいものが出てたりでちょっと変わってきています。なんか100円ショップの存在,そしてパソコン・スマホはカレンダー業界に大きな影響が出ているのではないかと心配してしまいます。
崩した字の「五」はちょっとわかりにくいです。

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