Haiku in English on Sunday (614) あざみあざやかなあさのあめあがり

日曜日は俳句の紹介と英訳。
今週初めに山形市の富神山に登ったことを書きましたが,低山とはいえ登山の楽しみの1つはいろいろな植物に出会えることです。

4togami33振り返れば.jpg

富神山で出会ったのは「ヤマツツジ」

4azami2tsutsuji.jpg

蝶が翅を休めるのは「ヒメジョオン」でしょうか。

4azami1himejoon.jpg

この花の名前はわかりません。登山口あたりで咲いていました。

4azami3nazo.jpg

そして,「アザミ」に今年初めて出会いました。

4togami31アザミ.jpg

「アザミ」(薊)は春の季語ですが,個人的には夏のイメージがあります。
単に「アザミ」と言う名前の種はないそうで,私が見たのは「ノアザミ」でしょうか。


あざみあざやかなあさのあめあがり  種田山頭火

種田山頭火.jpg

種田山頭火の句を取り上げるのはたぶん6度目。行乞漂白の放浪俳人。
第二句集「草木塔」(昭和8年)所収。

山頭火句集 草木塔【復刻版】 - 種田 山頭火
山頭火句集 草木塔【復刻版】 - 種田 山頭火

この句集に収められたのは87句。「其中一人」と「行乞途上」の2つに分けられ,今日の句は後者に。
ちなみに「行乞途上」の最初の6句は以下の通り。

松風すずしく人も食べ馬も食べ
けふもいちにち風をあるいてきた
何が何やらみんな咲いてゐる
あるけばきんぽうげすわればきんぽうげ
あざみあざやかなあさのあめあがり
うつむいて石ころばかり


これらの句を挙げるまでもなく,山頭火は自由律の俳人。
ひらがなばかりの句は彼にとっては珍しくないのですが,意図的に頭韻を用いているのはこの句だけだとか。

ざみざやかなさのがり

また,「あざみ」を季語とした句はこの一句だけと書いてあるものもあります。

雨が上がったある朝のこと,雨露に濡れた鮮やかな色のアザミを見たのでしょう。
その一瞬の驚きを切り取りました。


まあ,個人的には5・7・5という定型を捨てたのなら,このような技法も捨てたほうがいいとは思うんですが。
それが偶然だとか,一気に吹き出た言葉なら別ですが。


では,英訳してみます。

あざみあざやかなあさのあめあがり  種田山頭火

The color of thistles
Is so vivid after the rain
In the morning



アザミ thistle は英国を形成するスコットランドの国花となっています。

4azami4scotland.jpg

13世紀にデンマークと戦争をした際に,デンマーク軍の兵士がそのトゲに刺されて退却し,勝利を得たことから「国を救った花」として国花になっているそうです。

4azami5.jpg


今回写真を撮るのに茎を持ち上げたとき,チクチクしました。



この記事へのコメント

2024年05月26日 07:27
おはようございます。

 いつもながら、山頭火の句は難しいです。でも、この句が描く景色は直ぐ思い浮かべることが出来ました。

 アザミは種類も多く、同定が難しい花です。為に、見極める判別点が沢山あります。でもこれ、立ち姿がすっきりとしていますし、今咲いている事等から、「ノアザミ」かその近縁種だろうと思います。

 4枚目の写真の紺色の花は、恐らく「ツルニチニチソウ」(別名:ツルギキョウ)じゃないかと思います。街中でも普通に見られる花です。
2024年05月27日 07:15
あきあかねさん
おはようございます。
山頭火が表現技法に走るなんてどうしたんだろうと思いますが,ときにはこんなこともしたくなるのでしょう。
「ツルニチソウ」情報ありがとうございます! 「これよく裏庭とかに咲くやつ」とは言われたのですが私のポケット図鑑では見つけられませんでした。そして載っていませんでした。なんかキキョウっぽい形だなあと思ったのですが「ツルギキョウ」とも言うんですね。でもネット上には在来種の同名の植物があるので使わないほうがいいともありました。「ツルニチソウ」で覚えたいと思います。ありがとうございました。
2024年05月28日 06:16
おはようございます。

 もしかして誤解をされているかもしれないと思い、追加のコメントを致しました。
 この花、「ツルニチソウ」ではなく、「ツルニチニチソウ(蔓日々草)」と言います。同じキョウチクトウ科の「ニチニチソウ」に花が似ていて、蔓性なのでこの和名が付けられました。
 「ニチニチソウ」も、演芸商物としてとてもポピュラーで仙台でも街角の植え込みなどに植えられています。
 これは私個人の感想なのですが、「ツルニチニチソウ」の花は、ニチニチソウよりも「テイカカズラ」の方がよく似ています。同じ蔓性ですし、花の形も然り、また、花色も両者共に同色の白もありますので。

 ちなみに、「ニチニチソウ(日々草)」の名の由来は、「花期の間の初夏から晩秋まで次々に花が咲く」からだそうです。たしかに、いつ見ても花が咲いています。その辺が園芸植物としても好かれる由縁だと思います。
 でも、今回お話しした三種の花、いずれもキョウチクトウ科で有毒植物なんですけどね(笑)
2024年05月28日 07:33
あきあかねさん
すみません。かってに「ツルニチソウ」と間違って検索,間違ってコメントを書いていました。ただ,検索では「ツルニチニチソウ」で出ていました。「もしかして・・・」という検索の機能ですが気づいていなくても便利なものですね。こちらの間違いを修正してくれていました。