「源氏物語」の戻し訳(1)
現在,大河ドラマ「光る君へ」が放送されています。

光る君へ 後編 NHK大河ドラマ・ガイド - 大石 静, NHK出版, NHKドラマ制作班
私はほとんど見ていないのですが,「源氏物語」を書いた紫式部が主人公のドラマ。
前回の放送では,「枕草子」を書いた清少納言も出ていました。
「枕草子」が「をかし」の文学と言われるのに対し,「源氏物語」は「あはれ」の文学と言われます。
熱心な視聴者ではない理由には,「源氏物語」をきちんと読んでいないということがあるのですが,ちょっと興味を持ったのは最近,「源氏物語」の英訳本を日本語に訳戻している人がいることを知ったからです。
イギリス人,アーサー・ウェイリー Arthur D. Waley は独学で中国語や日本語を学び,「源氏物語」の全訳に挑みました。
ウェイリーは外国への旅行の間「源氏物語」を読んで,旅の記憶があまりないほど夢中になったそうです。
こちらは彼の肖像画。(Wikipedia より)

紫式部 Lady Murasaki 著「源氏物語」The Tale of Genji は1925年から1933年にかけて6巻に分けて出版されました。
すると「世界文学の中でもベスト2や3に必ず入る名作」とか「天才の作品」と原作が評価され,たちまちベストセラーになります。

ドナルド・キーン氏が古本屋で偶然見つけたこの本に魅了され,日本文学の研究に進んだ話は有名です。

ドナルド・キーン自伝 増補新版 (中公文庫) - ドナルド・キーン, 角地幸男
また,この The Tale of Genji はイタリア語,ドイツ語,フランス語などに二次訳されました。
二次訳はまだわかるんですが,それを日本語に「訳戻す」なんて!
その「訳戻し」は佐復秀樹氏によって行われ,2008年に出版されています。


源氏物語: ウェイリ-版 (1) (平凡社ライブラリー む 4-1) - 紫式部, アーサー ウェイリー, 佐復 秀樹
しかし,2017年末,俳人で評論家の毬矢まりえ氏と妹の森山恵氏によって新たな The Tale of Genji の日本語訳,つまり新しい「戻し訳」が出たのです。


源氏物語 A・ウェイリー版1 - 紫式部, アーサー ウェイリー, 毬矢 まりえ, 森山 恵
私がこのような試みを知ったのはNHKラジオ(R2)の「カルチャーラジオ 日曜カルチャー」で毬矢氏が4回にわたってそのいきさつを話しているのを興味深く聞いたから。
その放送のタイトルは「『源氏物語』英訳本を再和訳してわかったこと」。
最終回は終わりましたが,今度の日曜日の午前10:00に再放送がありますし,アプリ「らじる・らじる」で6月いっぱいならすべての回が聴けるようです。
「光る君」が Shining Prince となり,日本に再び帰ってきました。
長くなりそうなので,続きは次回。

光る君へ 後編 NHK大河ドラマ・ガイド - 大石 静, NHK出版, NHKドラマ制作班
私はほとんど見ていないのですが,「源氏物語」を書いた紫式部が主人公のドラマ。
前回の放送では,「枕草子」を書いた清少納言も出ていました。
「枕草子」が「をかし」の文学と言われるのに対し,「源氏物語」は「あはれ」の文学と言われます。
熱心な視聴者ではない理由には,「源氏物語」をきちんと読んでいないということがあるのですが,ちょっと興味を持ったのは最近,「源氏物語」の英訳本を日本語に訳戻している人がいることを知ったからです。
イギリス人,アーサー・ウェイリー Arthur D. Waley は独学で中国語や日本語を学び,「源氏物語」の全訳に挑みました。
ウェイリーは外国への旅行の間「源氏物語」を読んで,旅の記憶があまりないほど夢中になったそうです。
こちらは彼の肖像画。(Wikipedia より)

紫式部 Lady Murasaki 著「源氏物語」The Tale of Genji は1925年から1933年にかけて6巻に分けて出版されました。
すると「世界文学の中でもベスト2や3に必ず入る名作」とか「天才の作品」と原作が評価され,たちまちベストセラーになります。

ドナルド・キーン氏が古本屋で偶然見つけたこの本に魅了され,日本文学の研究に進んだ話は有名です。

ドナルド・キーン自伝 増補新版 (中公文庫) - ドナルド・キーン, 角地幸男
また,この The Tale of Genji はイタリア語,ドイツ語,フランス語などに二次訳されました。
二次訳はまだわかるんですが,それを日本語に「訳戻す」なんて!
その「訳戻し」は佐復秀樹氏によって行われ,2008年に出版されています。


源氏物語: ウェイリ-版 (1) (平凡社ライブラリー む 4-1) - 紫式部, アーサー ウェイリー, 佐復 秀樹
しかし,2017年末,俳人で評論家の毬矢まりえ氏と妹の森山恵氏によって新たな The Tale of Genji の日本語訳,つまり新しい「戻し訳」が出たのです。


源氏物語 A・ウェイリー版1 - 紫式部, アーサー ウェイリー, 毬矢 まりえ, 森山 恵
私がこのような試みを知ったのはNHKラジオ(R2)の「カルチャーラジオ 日曜カルチャー」で毬矢氏が4回にわたってそのいきさつを話しているのを興味深く聞いたから。
その放送のタイトルは「『源氏物語』英訳本を再和訳してわかったこと」。
最終回は終わりましたが,今度の日曜日の午前10:00に再放送がありますし,アプリ「らじる・らじる」で6月いっぱいならすべての回が聴けるようです。
「光る君」が Shining Prince となり,日本に再び帰ってきました。
長くなりそうなので,続きは次回。
この記事へのコメント
「戻し訳」と言うタイトルで「?」となりました(笑)
なるほどです。でも、実際のところ、「戻し訳」の小説や物語、洋の東西を問わず、今まで有りましたでしょうか、私は寡聞にして知りません。
幾つ書き込みたいコメントもあったのですが、また先走ってしまうといけないので、続きを待ってからにしますね。
おはようございます。
一度に書こうとしましたが,何回かに分けて書きます。
それにしても独学で源氏物語を訳すなんて・・・彼は語学の天才だったそうで何か国語も操れる,しかもアジアでは中国の古典も訳しています。源氏物語の出版のときは世界的傑作なんだと出版社を説得したとか。