夏は読書で(2) 漱石の「こころ」など

私の周りで書店が消えていきます。私の力では書店は救えませんが,ここに来てくれた人が少しでも興味を持ってくれる書籍があればと願いを込めて,前回書き足りなかったことを書きます。

新潮文庫,角川文庫,集英社文庫が行っている夏のフェア。
数は限られていますが,オリジナルのブックマーカーがもらえたりします。

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前回はその3社のフェアに共通している作品について書きました。
宮沢賢治著「銀河鉄道の夜」と太宰治著「人間失格」でした。

他にも3社共通の文庫本はたくさんあると思いますが,夏のフェアに「推し」として選ばれるということはそれだけ名作ということでしょう。

前回も最後にちらっと書いたのですが,3社の「推し」にはなっていないけど,2社で選ばれている作品があります。

夏目漱石著「こころ」

こころ (新潮文庫) - 漱石, 夏目
こころ (新潮文庫) - 漱石, 夏目

こゝろ (角川文庫 な 1-10) - 夏目 漱石
こゝろ (角川文庫 な 1-10) - 夏目 漱石

上の角川文庫のカバーでは「こころ」となっていますが,本体では「こゝろ」となっています。
今では「先生と私」「両親と私」「先生と遺書」の3部に再構成されていますが,新聞連載の時点では「心」,しかも「先生遺書」という書き出しで始まっています。

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しかも,この「こころ」ですが新潮文庫のロングセラー第1位です。
(初版刊行時から2024年3月末までの累計発行部数)
ちなみに2位が「人間失格」,3位が「老人と海」,4位が「坊っちゃん」

ちょっと余談でした。他にも2社のフェアで「推し」の小説は・・・。

芥川龍之介著「羅生門」

羅生門・鼻 (新潮文庫) - 芥川 龍之介
羅生門・鼻 (新潮文庫) - 芥川 龍之介

羅生門・鼻・芋粥 (角川文庫) - 龍之介, 芥川
羅生門・鼻・芋粥 (角川文庫) - 龍之介, 芥川

どちらも「鼻」を併載しています。芥川のシリアスな面とユニークな面が楽しめます。

梶井基次郎著「檸檬」

檸檬 (新潮文庫) - 基次郎, 梶井
檸檬 (新潮文庫) - 基次郎, 梶井

檸檬 (角川文庫) - 梶井 基次郎
檸檬 (角川文庫) - 梶井 基次郎

仙台駅前にも丸善がありますが,行くたびにこの小説を思い出しては冷や汗が出ます(笑)。

中島敦著「李陵・山月記」

李陵・山月記 (新潮文庫) - 敦, 中島
李陵・山月記 (新潮文庫) - 敦, 中島

李陵・山月記・弟子・名人伝 (角川文庫) - 敦, 中島
李陵・山月記・弟子・名人伝 (角川文庫) - 敦, 中島

新潮文庫ではプレミアムカバーで販売されていると思います。
個人的には「山月記」が好きですが「名人伝」もまた捨てがたい。

ここまでの2社の組み合わせはすべて新潮文庫と角川文庫。
しかし,新潮文庫と集英社文庫の組み合わせで,しかも海外の小説があります。それは何でしょう?

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それは,サン=テグジュペリ著「星の王子さま」

星の王子さま (新潮文庫) - サン=テグジュペリ, 河野万里子
星の王子さま (新潮文庫) - サン=テグジュペリ, 河野万里子

星の王子さま (集英社文庫) - Antoine de Saint Exup´ery, アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ, 池澤 夏樹
星の王子さま (集英社文庫) - Antoine de Saint Exup´ery, アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ, 池澤 夏樹

ちなみに,新潮文庫は河野万里子氏の新訳。
集英社文庫は池澤夏樹氏訳。


数社にまたがる文庫作品は,当然版権がなくなっている作品なのでしょう。
ですから,古典に入りそうな名作になります。

ここに講談社文庫が入ってきたらもっとおもしろいんだけどな。

まあ,講談社文庫も「夏まつり」をしたり「ミステリーフェア」をする年もありますが。


この記事へのコメント

2024年08月09日 07:09
おはようございます。

 いずれも”名作”と呼ばれるものばかりですね。しかも、学校図書館で推薦図書になるようなものばかりです。
 どうなんですか、今の生徒さん達はこうした本を図書館から借りだしたり、自分で本屋さんに買いに行くようなことはあるのでしょうか? 先日丸善に寄った時は小学生らしき姿は2,3人見受けたのですが、中・高生の姿は見ませんでした。その見かけた子たちも、どんな本を選んだのかまでは確かめませんでした。

 昔ばなしなのですが、先生が此度「オリジナルのブックマーカー」の話をしてらっしゃたので思い出したのですけど…
 私、中学生の頃、学校図書館の年間貸し出し数が一位になったことがあるんです。その時、担任を通じて司書さんから頂いたのがオリジナルのブックマーカーでした。三色の革製で、たぶん出入りの書店から頂いたものを司書さんがストックしていたのではないかと思うのですけど、結構私は気に入って使っていました。
2024年08月10日 06:46
あきあかねさん
おはようございます。
文庫になっているだけでなく,このようにフェアに持ち出される作品とは間違いなく名作だと思います。最近の中学生は以前より本を読まない気がしますが,相変わらず「本の虫」はいます。こういう夏のフェアでも何でもいいから,そのような子どもたちが増えていけばいいんだけど。
図書館の先生は今でも何とかして読んでもらおうとフェス的なことをしたり,栞のプレゼントをしたり。あきあかねさんのような思い出になるといいですね。