Haiku in English on Sunday (625) 七夕竹惜命の文字隠れなし

日曜日は俳句の紹介と英訳。
前回,仙台七夕まつりについて書きましたが,七夕は新暦の7月7日にも行われますが,俳句では「七夕」は秋の季語
青森の佞武多や秋田の竿灯も言うなれば七夕行事の1つです。

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季語としては「七夕」の他に「七夕祭」「星祭」「彦星」「織姫」「七夕竹」「七夕竹売り」「短冊竹」「七夕流し」などがあります。


七夕竹惜命の文字隠れなし  石田波郷
(たなばただけしゃくみょうのもじかくれなし)

「よくわかる俳句歳時記」より。

ハンディ版 オールカラー よくわかる俳句歳時記 - 石 寒太
ハンディ版 オールカラー よくわかる俳句歳時記 - 石 寒太

石田波郷の句を取り上げるのは8度目だと思います。

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波郷は戦地で胸膜炎を病み,その再発によって昭和23年,東京・清瀬村の国立東京療養所に入院します。
当時,結核は不治の病でした。 

療養所の七夕竹の願い事を書いた短冊の中に「惜命」の文字を見つけました。
ここに入院している患者にとって,それがいちばんの願いなのです。
その願いが下五の「隠れなし」に集約されました。


この句はまさに句集「惜命」(昭和25年)に収められました。

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では,英訳してみます。

七夕竹惜命の文字隠れなし  石田波郷

In the decorations
Of Star Festival, I found words of
My Dear Life



英訳には改良の余地ありです。


この記事へのコメント

2024年08月11日 06:49
おはようございます。

 「惜命」を「My Dear Life」と訳されたのですね。
 う~ん、確かに「惜命」を英訳するのは難しいですね。元の意味には多分に仏教的な概念が含まれていますし、現在は「命を惜しむ事、命の出し惜しみ」のような意味に捉えられがちです。
 元々は道元禅師の『但惜身命 不惜身命』を略した言葉なので、「大事に充って使われる命なのだから、それまでは無駄にしてはいけない」と言った意味です。「必要に応じてはその一命をも賭す」と言うニュアンスが裏に隠れているわけで、これを一語に訳すのは難しいですね。

 で、この句ですが、私には、病で死ぬなど無駄死はしたくない、という、作者の強い決意の様に読み取れました。
2024年08月12日 06:37
あきあかねさん
おはようございます。まず「惜命」という言葉は辞書にもなく,「不惜身命」から来ているようですね。そんな口上を言った力士もいましたが。となると強い決意があるのですが,「命を惜しむ」をどう訳すかが難しい。しかも短冊に願いを書くという前提が理解してもらえるのか。なんだかんだで上記のような英訳になったのですが,「命を惜しむ」というよりは,「愛おしい我が命」のような意味のほうが伝わると,ちょっとした決まり文句的な表現
Life is very dear to me.
を意識して訳しました。そもそも日本語の「惜しむ」って言う言葉自体が難しい語感があります。