Haiku in English on Sunday (626) 水引に滝のしぶきと深山露

日曜日は俳句の紹介と英訳。
先日,群馬県の吹割の滝に行ったことを書きました。

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その遊歩道を上流に向かって歩いているとき,小さな花を見つけました。水引の花です。

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「水引の花」「水引草」は秋の季語で,初秋に茎の先から数本の花柄を出し,花をつけます。
花弁は赤と白が混じる姿が飾り紐の水引に似ているところからこの名前が着きました。


水引に滝のしぶきと深山露  大野林火
(みずひきにたきのしぶきとみやまつゆ)

「深山露」は「みやまづゆ」と読んでもいいでしょう。

大野林火の句を取り上げるのは,彼の知名度から考えると意外にも2度目です。
横浜市生まれの俳人(1904-1982),東京大学経済学部卒。

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「俳句はおよそ個人の文学である」「俳句は私に発する心の記録」が彼の俳句信条。
戦後は角川書店の俳誌「俳句」の編集長として,若き日の金子兜太や鈴木六林男らを俳壇に送り出しました。

今日の句は句集「冬雁」(1948年)所収。

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それにしても不思議な句です。
「水引」は秋の季語,「滝」は夏,「露」は秋。

夏の句なのか,秋の句なのか,季語が混在しているだけでも珍しいのに。
でも,作者の視線は間違いなく「水引」に向かっているので,これを主の季語としましょう。

今回,この句を取り上げたのは,吹割の滝で見た水引の花にこの句がぴったりだったからです。

秋を迎えた水引草が山中の滝のそばにありました。滝のしぶきと山の露がかかって,水引の花がしっとりと水を含んで咲いていました。きっと鮮やかな赤だったことでしょう。


では,英訳してみます。

水引に滝のしぶきと深山露  大野林火

Persicaria filiformis
Is blooming with smoke of the waterfall
And mountain dew



「水引」はどうしても学名っぽくなってしまいます。



この記事へのコメント

2024年08月18日 06:36
おはようございます。

 数日前、私も街角でミズヒキを見つけまして、やはり、秋だなあ、って思いました。この時期のミズヒキの紅白とツユクサの薄青に季節感を感じます。特に、露を置いたミズヒキやツユクサは、虫の音と共に秋を代表するような景色ですね。

 「mountain dew」と言う言葉、聞いたことが有ったなあ、ってつらつら考えていまして、今、思い出しました。清涼飲料水の名前に有りましたよね。
 で、この「mountain dew」にはカロリーカットの「Diet Mountain Dew」のがありまして、これを題名にした歌をついこの間YouTubeで聞いた所だったんです。ちょっと面白い歌詞だったので私の興味アンテナに引っかかっていました。解説と和訳の歌詞付きの動画のリンクを下に貼っておきます。
『【ラナ・デル・レイ】https://www.youtube.com/watch?v=_8Tyci2LOB8
 要は、この「Diet Mountain Dew」を中途半端と言うか、優柔不断な男の代名詞のように扱っているのですけど…
2024年08月18日 06:56
あきあかねさん
おはようございます。まだまだ暑いですが確実に秋に向かっているようです。夜は虫の声も聞こえます。
マウンテン・デューですが,私も書くときのあの清涼飲料水を思い出しました。というか寄せました。この飲み物がペプシから出たときに,コカ・コーラからはメロー・イエローが出て,似た系統の味ですが,どちらを飲もうか迷ったものです。
動画を見ました。やはりノンシュガーは中途半端な意味があるようで,これは選挙戦でも使われたみたいですね。