小説で世界でいちばん長い1文とは? (1)
最近は昔読んだ本を振り返るために,その本を話題にした動画を見たりします。
ミステリー系の本が多いんですが,「砂の女」とか「フォークナー」と入力し,動画を見たり,音声だけを聞いたりします。
私の中では長編小説で言えば,日本文学の最高峰が安部公房の「砂の女」,世界文学ではフォークナーの「アブサロム,アブサロム!」が頂点です。
先日,フォークナーに関する動画を見ていたら,「アブサロム,アブサロム!」の中の1文が1983年版のギネスブックに「文学で最も長い1文」(the Longest Sentence in Literature)として載っていることを知りました。

Absalom, Absalom!
「アブサロム,アブサロム!」はアメリカ南部を舞台にしたフォークナーの連作小説の1つで,長編小説でかつ複雑な構成になっています。

上の写真の岩波文庫版は巻頭に各章の視点と概略が書いてあるので,ネタバレになっています。巻頭を読まないことをお勧めします。
あまりに複雑なので,30年以上も前に読んだとき,私は線を引き,代名詞が誰のことかなど書き込みをしながら読みました。


では「小説における最長の1文」について英語の記事から見てみましょう。
This 1,288-Word Run-On Sentence Broke Records and Inspired Hundreds of Modern Writers
1,288語の「無終止文」が記録を作り数百の現代作家に影響を与えた
The huge run-on sentence consists of 1,288 words and countless clauses. It takes patience to read, but once you get into the rhythm, it’s like delving into Faulkner’s stream of consciousness. The experimental writer’s sentence style inspired hundreds of writers since, including Samuel Beckett, Virginia Woolf, F. Scott Fitzgerald, James Joyce, and other masters of modern literature.
その長大な無終止文は1,288の単語と数えきれないほどの節から成る。読むのには忍耐が必要だが,一度リズムに乗ってしまえば,フォークナーの意識の流れをさぐっているかのようだ。その実験的な作家の文章スタイルはそれ以来数百人の作家を刺激した。それにはサミュエル・ベケット,ヴァージニア・ウルフ,F・スコット・フィツジェラルド,ジェームズ・ジョイスや他の現代文学の巨匠たちが含まれる。
Nowadays, postmodern fiction writers such as John Barth are still influenced by Faulkner’s run-on technique. He once said, “It was Faulkner at his most involuted and incantatory who most enchanted me.” The current record holder for the longest English sentence is Jonathan Coe for his staggering 33-page, 13,955-word sentence in The Rotter’s Club, 2001. Though the record has been broken, Faulkner's legacy lives on.
最近では,ジョン・バースのような小説家が今でもフォークナーの無終止文の手法に影響を受けている。バースは言っている。「僕を魅了したのは最も複雑で魔術のような時代のフォークナーさ」 現在の最も長い英文の記録所有者はジョナサン・コーで,2001年の The Rotter's Club には驚くことに33ページにわたり13,955語の文がある。記録は破られても,フォークナーの遺産は生き続ける。
この「アブサロム,アブサロム!」がノーベル文学賞につながったとも言われるフォークナー。

そのギネスに載った「小説で世界でいちばん長い1文」を見たいところですが・・・
文字通り,長くなるので・・・
つづく
ミステリー系の本が多いんですが,「砂の女」とか「フォークナー」と入力し,動画を見たり,音声だけを聞いたりします。
私の中では長編小説で言えば,日本文学の最高峰が安部公房の「砂の女」,世界文学ではフォークナーの「アブサロム,アブサロム!」が頂点です。
先日,フォークナーに関する動画を見ていたら,「アブサロム,アブサロム!」の中の1文が1983年版のギネスブックに「文学で最も長い1文」(the Longest Sentence in Literature)として載っていることを知りました。

Absalom, Absalom!
「アブサロム,アブサロム!」はアメリカ南部を舞台にしたフォークナーの連作小説の1つで,長編小説でかつ複雑な構成になっています。

上の写真の岩波文庫版は巻頭に各章の視点と概略が書いてあるので,ネタバレになっています。巻頭を読まないことをお勧めします。
あまりに複雑なので,30年以上も前に読んだとき,私は線を引き,代名詞が誰のことかなど書き込みをしながら読みました。


では「小説における最長の1文」について英語の記事から見てみましょう。
This 1,288-Word Run-On Sentence Broke Records and Inspired Hundreds of Modern Writers
1,288語の「無終止文」が記録を作り数百の現代作家に影響を与えた
The huge run-on sentence consists of 1,288 words and countless clauses. It takes patience to read, but once you get into the rhythm, it’s like delving into Faulkner’s stream of consciousness. The experimental writer’s sentence style inspired hundreds of writers since, including Samuel Beckett, Virginia Woolf, F. Scott Fitzgerald, James Joyce, and other masters of modern literature.
その長大な無終止文は1,288の単語と数えきれないほどの節から成る。読むのには忍耐が必要だが,一度リズムに乗ってしまえば,フォークナーの意識の流れをさぐっているかのようだ。その実験的な作家の文章スタイルはそれ以来数百人の作家を刺激した。それにはサミュエル・ベケット,ヴァージニア・ウルフ,F・スコット・フィツジェラルド,ジェームズ・ジョイスや他の現代文学の巨匠たちが含まれる。
Nowadays, postmodern fiction writers such as John Barth are still influenced by Faulkner’s run-on technique. He once said, “It was Faulkner at his most involuted and incantatory who most enchanted me.” The current record holder for the longest English sentence is Jonathan Coe for his staggering 33-page, 13,955-word sentence in The Rotter’s Club, 2001. Though the record has been broken, Faulkner's legacy lives on.
最近では,ジョン・バースのような小説家が今でもフォークナーの無終止文の手法に影響を受けている。バースは言っている。「僕を魅了したのは最も複雑で魔術のような時代のフォークナーさ」 現在の最も長い英文の記録所有者はジョナサン・コーで,2001年の The Rotter's Club には驚くことに33ページにわたり13,955語の文がある。記録は破られても,フォークナーの遺産は生き続ける。
この「アブサロム,アブサロム!」がノーベル文学賞につながったとも言われるフォークナー。

そのギネスに載った「小説で世界でいちばん長い1文」を見たいところですが・・・
文字通り,長くなるので・・・
つづく
この記事へのコメント
長文も小説の作法のテクニックになっているのですか… 私などは、出来るだけ短文で表現することに腐心するのですけど。
「小説で世界でいちばん長い1文」の和訳文も世界一長いのでしょうね。もしかして添付の2枚の写真はそれですか?
おはようございます。
私も文はなるべく短く平易な言葉を使うことが大切と考えています。特に仕事上の文は間違いなくそれが大切だと思います。ヘミングウェイみたいですね。
日本語訳ですが篠田訳ではさすがに途中で「。」句点が入ります。日本語は前置修飾が多く関係代名詞がないので宿命ですよね。一方,岩波文庫版藤平育子訳では一文訳に挑戦しています。ただ,セリフの「」内では「?」に代わって「。」を使っている部分がありますが。
「意識の流れ」は20世紀文学の大きな特徴ですが,そのあたりは次の記事で書きました。