Haiku in English on Sunday (637) 供花揺らし色なき風の行きにける

日曜日は俳句の紹介と英訳。
暦の上ではもうすぐ立冬です。秋の句について書くのも最後になるのでしょうか。
この日曜俳句も書いていると,同じ季語を取り上げることが多くなります。
今回は過去に1回だけ取り上げたことがある秋の季語の句です。

供花揺らし色なき風の行きにける  近藤紀子
(くげゆらしいろなきかぜのゆきにける)

近藤紀子氏は「槐」(えんじゅ)の同人。2015年1月号所収。

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季語「色なき風」紀友則のこの歌が元となり,他の歌が作られたり,俳句の季語になったとされます。

吹き来れば身にもしみける秋風を色なきものと思ひけるかな

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ところが,掲載していない歳時記もあり,実は絶滅危惧の季語なのです。

これは先週撮った空の様子。秋らしい鱗雲も見られます。

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近しい方が亡くなったのでしょう。供えた花を揺らし風が通り抜けていきました。
「秋風」「秋の風」を使ってもいいのでしょうが,「色なき風」の方が亡くなった方の御霊,人々の思いと呼応するように感じるのは季語の力です。


では,英訳してみます。

供花揺らし色なき風の行きにける  近藤紀子

Offering flowers
Blown by colorless wind
That has gone



簡単には使えない難しい季語ですね。



この記事へのコメント

2024年11月04日 06:46
おはようございます。

 私の季語辞典はコンパクト版なので、この「色なき風」は載っていませんでした。「色なき風」にどんな気持ちを載せるのか、難しいですね。使い方が難しい季語です。
 そもそも、「色」をどう解釈するのか、が問題です。英訳も難しかったのじゃなかったですか?
2024年11月04日 07:44
あきあかねさん
おはようございます。
「秋来ぬと」のように日本人は風で季節を感じ取ったようですね。俳句の世界では「秋風」「秋の風」「金風」などの季語があります。
私はよく知らないのですが受け売りだと,木・火・土・金・水の陰陽五行説になぞらえると,秋は「金」,その配色は「白」で,これを下敷きに秋の風を「色なき風」と歌ったとのことです。
紀友則の歌から取られたという新古今の
物思へば色なき風もなかりけり身にしむ秋の心ならひに
が俳句の季語になったそうですが,あまり一般的ではないために載せていない歳時記が多いのでしょう。