Haiku in English on Sunday (638) 懸命な吾子の一歩よ今朝の冬

日曜日は俳句の紹介と英訳。
先日7日の立冬を過ぎたと思ったら,本当に寒さが進みました。昨日の朝,私が住んでいる仙台市西部は車のフロントガラスが朝に凍っていました。

「立冬」はもちろん冬の季語ですが,立冬の朝のことを「今朝の冬」といい,冬になったという気持ちを強調する季語になっています。

懸命な吾子の一歩よ今朝の冬  長谷川秋子
(けんめいなあこのいっぽよけさのふゆ)

「俳句発想法 歳時記 冬・新年」より。

俳句発想法歳時記 (冬・新年) (草思社文庫 ひ 1-2) - ひらの こぼ
俳句発想法歳時記 (冬・新年) (草思社文庫 ひ 1-2) - ひらの こぼ

長谷川秋子は大正最後の年に生まれた東京の俳人(1926-1973)。
父は俳人の沢本知水。立教高等女学院に学びます。昭和21年に結婚,昭和44年,義母の長谷川かな女の逝去に伴い「水明」を継承主宰。

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親が子のことを詠む,いわゆる「吾子(あこ)俳句」。
最も有名なのはこの句でしょうか。

万緑の中や吾子の歯生え初むる  中村草田男

まあ「吾子俳句」は私の造語ですが,長谷川秋子の吾子は後の小説家の三田完

草の花 俳風三麗花 - 三田 完
草の花 俳風三麗花 - 三田 完

つかまり立ちから我が子が第一歩を踏み出す瞬間は,親にとっては感動の瞬間でもあります。
そこに居合わせることができるのは子育ての特権でしょう。

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そして,慎重にかつ大胆に一歩一歩を進めていきます。
そんな我が子の小さな成長を見ている毎日,気づけば立冬の朝でした。


では,英訳してみます。

懸命な吾子の一歩よ今朝の冬  長谷川秋子

One small hard step
For my dear child
First morning in winter



英訳にはアポロ11号のアームストロング船長の言葉を意識しました。

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That's one small step for a man, one giant leap for mankind.
一人にとっては小さな一歩だが,人類にとっては大きな飛躍だ。


直立歩行したがゆえに,ここまで進歩した人類。
最初に立ったヒトは,なぜ立とうとしたのでしょうね。

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この記事へのコメント

2024年11月10日 06:44
おはようございます。

 7日だったかしら、8日だったかしら、朝、住まいを出る時に泉ヶ岳の初冠雪を見ました。朝晩、身を震わせるようになりましたね。

 この句ですが、『懸命な』は『吾子』に係るのでしょうか? 『一歩』に係るのでしょうか? はたまた、両方なのか?
 先生の英訳を拝見するに、『一歩』の方、と先生はお考えになられたようですね。私としては、両方と捉えた方がこの句の情景を思い浮かべやすかったのですが…
2024年11月11日 06:31
あきあかねさん
おはようございます。蔵王もすっかり雪をいただきました。まるでエコーラインの閉鎖を待っていたかのようです。
「懸命な」自体どんな英語を用いるか悩みましたが,人を修飾するよりいちばんすっきりする「一歩」にかかるように訳しました。まあ,原文が「吾子の一歩」にかかると考えて訳した感じです。