明治の外国人が見た富士山(4) ラフカディオ・ハーン 前編

ラフカディオ・ハーンについてはこれまで何度も書いてきたので,詳細は略します。

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ギリシャ生まれのイギリス人で,アメリカで記者などをしていました。そして1890年に日本にジャーナリストとしてやってきます
これは同行した画家が描いたハーンの後ろ姿。(LHとイニシャルが描いてあります。)

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まあ,ハーンはこの画家より条件が悪く契約していたことを知り,出版社に絶縁状を送りつけてしまうんですが,そんな後ろ盾を失った波乱の日本滞在ですが,2年をかけて大書 Grimpses of Unfamiliar Japan(「日本の面影」)を出します。

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私が持っているのは角川文庫の限定復刊版。

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富士山は「東洋の第一日」という冒頭で早い段階で描かれます。
1890年4月4日,横浜に彼は上陸しました。

There is some charm unutterable in the morning air, cool with the coolness of Japanese spring and wind-waves from the snowy cone of Fuji;

日本の春の冷やかさと,雪をいただいた円錐形の富士山から吹いてくる山おろしでひんやりした朝の大気には,言いようのない快さがある。



この文章も「東洋の第一日」から。

And enormously high above the line of them towers an apparition indescribably lovely, — one solitary snowy cone, so filmily exquisite, so spiritually white, that but for its immemoriaUy familiar outline, one would surely deem it a shape of cloud. Invisible its base remains, being the same delicious tint as the sky : only above the eternal snow-line its dreamy cone appears, seeming to hang, the ghost of a peak, between the luminous land and the luminous heaven, — the sacred and matchless mountain, Fujiyama.

そして,この山脈の線からさらに遥かに高く,なんとも言いようのないほど麗しいまぼろしがそびえたっている。このただ一つ孤立している白雪をいただいた円錐形のものは,薄もやのように絶妙で,この世のものと思えぬほど純白なので,もし大昔から見慣れた形でなかったら,誰でもきっと一かたまりの雲かと思うだろう。麓は空とおなじような気持ちのよい色をしているのでよく見えず,ただ永劫の雪線の上に,夢のような円錐形だけが,光りかがやく陸と空とのあいだに険しい峰のまぼろしが懸っているように,姿を現わしているのだ。――これこそ神々しくて類のない富士山なのである。



これまで紹介した富士山の描写の中では,間違いなくトップレベルの名文ですね。


つづく



この記事へのコメント

2024年11月13日 06:57
おはようございます。

 確かに、詩的表現や比喩の多い美麗文ですね。アメリカ人作家に多い文体だなあ、って思いました。
 複構文で、1文が長いので、翻訳には苦労しそうですね(笑)
2024年11月14日 06:10
あきあかねさん
おはようございます。
小泉八雲の文章は名文が多いような気がします。訳については時間がないので日本語訳をちょっとだけ読みやすい表記で紹介しています。
後半では,意外なことがわかりました。