明治の外国人が見た富士山(7) ネリー・ブライ
前回,エリザベス・ビスランドとネリー・ブライの世界一周レース,そしてエリザベスとラフカディオ・ハーンについて書きました。
エリザベスとネリーの世界一周レースの詳細は7年程前の過去記事で。
「八十日間世界一周」の旅(1) 原作と映画
「八十日間世界一周」の旅(2) ネリー・ブライの冒険
「八十日間世界一周」の旅(3) エリザベス・ビスランドの冒険
「八十日間世界一周」の旅(4) ネリーとエリザべスの「競争」
「八十日間世界一周」の旅 (5)ネリー・ブライと日本と
「八十日間世界一周」の旅 (6)エリザベス・ビスランドと日本と
「八十日間世界一周」の旅 (7)エリザベス・ビスランドが見た日本
エリザベス・ビスランドがサンフランシスコから横浜に到着し,日本に滞在したのがわずか36時間なのに対して,ネリー・ブライは香港から横浜に着き,なんと5日間日本に滞在し,横浜,東京,鎌倉を観光しました!
エリザベスがわずか36時間で少なくとも富士山については3回記述しています。(前回の記事を参照)
In Seven Stages: A Flying Trip Around the World
ところが,ネリーは5日間も日本にいるのに富士山の記述が1つもないのです!
Around the World in 72 Days
第12章「日本での120時間」ONE HUNDRED AND TWENTY HOURS IN JAPAN.には Fuji も Fujiyama も出てきません。
鎌倉見物までしているのに富士山の記述がない!?
I went to Kamakura to see the great bronze god, the image of Buddha, familiarly called Diabutsu. It stands in a verdant valley at the foot of two mountains. It was built in 1250 by Ono Goroyemon, a famous bronze caster, and is fifty feet in height; it is sitting Japanese style, ninety-eight feet being its waist circumference; the face is eight feet long, the eye is four feet, the ear six feet six and one-half inches, the nose three feet eight and one-half inches, the mouth is three feet two and one-half inches, the diameter of the lap is thirty-six feet, and the circumference of the thumb is over three feet.
私は鎌倉に大きな銅像の仏陀像を見に行きました。それは親しみを込めて「大仏」Diabutsuと呼ばれています。それは2つの山のふもとの緑の谷間に建っています。それは1250年に有名な鋳物師,大野五郎右衛門によって建てられました。高さは50フィート(1フィートは約30センチ),日本式の座像で,胴回りが98フィート,顔の長さが8フィート,目は4フィート,耳は6フィート6.5インチ,鼻が3フィート8.5インチ,口が3フィート2.5インチ,ひざの直径は36フィート,親指の周囲は3フィートを越えています。
当時の鎌倉の大仏。
香港からの横浜に向かう船上で大晦日のパーティーを楽しみ,年が明けてから床に就き,気づいたら日本だったネリーは,エリザベスのような富士山で日本を意識した体験はなかったようです。
では,5日間ずっと曇っていたり,雨や雪が降っていたのか?
こんな文章があります。
Rain the night previous had left the streets muddy and the air cool and crisp, but the sun creeping through the mistiness of early morning, fell upon us with most gratifying warmth.
前夜の雨が通りをぬかるみにし,空気はひんやりとすがすがしかった。しかし,早朝の霧の間から太陽がゆっくり昇り,最高に満足のいく暖かさを私たちに与えました。
悪い天気ではないことがわかります。
きっと富士山を見たとは思うんですが,劇的な出会いとか,荘厳さを感じる瞬間とかはなかったのかなあ。
The Japanese are the cleanliest people on earth,...
日本人は地球上でもっとも清潔。
香港でよほどひどい目に遭ったようで,日本を「愛と美しさと詩と清潔の国」と呼んでいます。
他にも,この世界一周についてインタビューを受けたこと,服装や交通,英語教育,コダックのカメラを持ってこなかった後悔,などなどが書いてありますが,富士山については記述がありません。
もう,富士山は西洋人にとって当たり前になっていたのかなあ?
あえて書かないことで,富士山の偉大さを表現しようとしたのか? それならばもう「秘すれば花」の世界ですね。
エリザベスとネリーの世界一周レースの詳細は7年程前の過去記事で。
「八十日間世界一周」の旅(1) 原作と映画
「八十日間世界一周」の旅(2) ネリー・ブライの冒険
「八十日間世界一周」の旅(3) エリザベス・ビスランドの冒険
「八十日間世界一周」の旅(4) ネリーとエリザべスの「競争」
「八十日間世界一周」の旅 (5)ネリー・ブライと日本と
「八十日間世界一周」の旅 (6)エリザベス・ビスランドと日本と
「八十日間世界一周」の旅 (7)エリザベス・ビスランドが見た日本
エリザベス・ビスランドがサンフランシスコから横浜に到着し,日本に滞在したのがわずか36時間なのに対して,ネリー・ブライは香港から横浜に着き,なんと5日間日本に滞在し,横浜,東京,鎌倉を観光しました!
エリザベスがわずか36時間で少なくとも富士山については3回記述しています。(前回の記事を参照)
In Seven Stages: A Flying Trip Around the World
ところが,ネリーは5日間も日本にいるのに富士山の記述が1つもないのです!
Around the World in 72 Days
第12章「日本での120時間」ONE HUNDRED AND TWENTY HOURS IN JAPAN.には Fuji も Fujiyama も出てきません。
鎌倉見物までしているのに富士山の記述がない!?
I went to Kamakura to see the great bronze god, the image of Buddha, familiarly called Diabutsu. It stands in a verdant valley at the foot of two mountains. It was built in 1250 by Ono Goroyemon, a famous bronze caster, and is fifty feet in height; it is sitting Japanese style, ninety-eight feet being its waist circumference; the face is eight feet long, the eye is four feet, the ear six feet six and one-half inches, the nose three feet eight and one-half inches, the mouth is three feet two and one-half inches, the diameter of the lap is thirty-six feet, and the circumference of the thumb is over three feet.
私は鎌倉に大きな銅像の仏陀像を見に行きました。それは親しみを込めて「大仏」Diabutsuと呼ばれています。それは2つの山のふもとの緑の谷間に建っています。それは1250年に有名な鋳物師,大野五郎右衛門によって建てられました。高さは50フィート(1フィートは約30センチ),日本式の座像で,胴回りが98フィート,顔の長さが8フィート,目は4フィート,耳は6フィート6.5インチ,鼻が3フィート8.5インチ,口が3フィート2.5インチ,ひざの直径は36フィート,親指の周囲は3フィートを越えています。
当時の鎌倉の大仏。
香港からの横浜に向かう船上で大晦日のパーティーを楽しみ,年が明けてから床に就き,気づいたら日本だったネリーは,エリザベスのような富士山で日本を意識した体験はなかったようです。
では,5日間ずっと曇っていたり,雨や雪が降っていたのか?
こんな文章があります。
Rain the night previous had left the streets muddy and the air cool and crisp, but the sun creeping through the mistiness of early morning, fell upon us with most gratifying warmth.
前夜の雨が通りをぬかるみにし,空気はひんやりとすがすがしかった。しかし,早朝の霧の間から太陽がゆっくり昇り,最高に満足のいく暖かさを私たちに与えました。
悪い天気ではないことがわかります。
きっと富士山を見たとは思うんですが,劇的な出会いとか,荘厳さを感じる瞬間とかはなかったのかなあ。
The Japanese are the cleanliest people on earth,...
日本人は地球上でもっとも清潔。
香港でよほどひどい目に遭ったようで,日本を「愛と美しさと詩と清潔の国」と呼んでいます。
他にも,この世界一周についてインタビューを受けたこと,服装や交通,英語教育,コダックのカメラを持ってこなかった後悔,などなどが書いてありますが,富士山については記述がありません。
もう,富士山は西洋人にとって当たり前になっていたのかなあ?
あえて書かないことで,富士山の偉大さを表現しようとしたのか? それならばもう「秘すれば花」の世界ですね。
この記事へのコメント
この方の文体は面白みがない、というか、事実のみを書く”簡潔体”と言うような文体ですね。ジャーナリストだからかしら。それにしては、もっとも当たり前な富士山に対するコメントが無いのも不思議です。
ん~、これだけから推測するのは乱暴なのですけど、ちょっと近視眼的な見方をしているようにも見受けられます。身近にあったものだけしか記述していないからです。
この人は今でいう突撃取材のように自ら取材し記事にするタイプだったらしいのですが,ジャーナリスト的なのはわかりますが,やはり富士山の記述がないのは不思議です。この頃には有名になっていたはずなんですが・・・。