「金髪のジェニー」と沖縄民謡

先週は72日間で世界一周をやり遂げたネリー・ブライのことを取り上げました。

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でも,本名は,エリザベス・ジェーン・コクラン(Elizabeth Jane Cochran)
1864年5月5日,ペンシルベニア州生まれ。
彼女は調査取材が得意で,ニュー・ヨークの新聞社に職を得たジャーナリストでした。

ネリー・ブライ(Nellie Bly)はジャーナリストとしてのペンネームで,どこから来たのか?

それは,スティーブン・フォスターのヒット曲のタイトルからとったそうです。(原曲の Nelly を Nellie に変えてはありますが。)

こちらがフォスター,音楽室の壁によく貼ってあります。

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そして,こちらが「ネリー・ブライ」



フォスターの曲といえば・・・「なつかしきケンタッキーのわが家」 My Old Kentucky Home,「おお,スザンナ」Oh! Susanna,「故郷の人々(スワニー河)」 Old Folks at Home (Swanee River),「草競馬」 De Camptown Race,「夢見る佳人」Beautiful Dreamer,などタイトルを見ただけでメロディーが浮かんでくる曲も多いのではないでしょうか。

話は急に変わります。

坂本龍一さんのアルバム「Beauty」は8作目のオリジナルアルバム。

Beauty - 坂本龍一, Ryuichi Sakamoto
Beauty - 坂本龍一, Ryuichi Sakamoto

海外盤と日本盤では曲目や曲順が異なるようですが,この中に「ロマンス」Romance という曲があります。

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まだ聞いたことのない方は,ぜひ聞いていただきたい作品です。



坂本龍一さんはキーボードを担当しています。
印象的な女性ボーカルおよび三線を担当しているのは我如古より子さん,古謝美佐子さん,玉城一美さんで,「オキナワチャンズ」としてアメリカツアーやワールドツアーにも同行しています。

さて,みなさんはこの「ロマンス」という曲,どのような感想をもたれましたか?

私はこんな沖縄民謡があるんだ,と思いましたが,それはどうも違いました。
アルバム Beauty のライナーノーツを見てみましょう。

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実はこの曲は先述のスティーブン・フォスター作「金髪のジェニー」なのです!
こちらがよく聞く「金髪のジェニー」 Jeanie with the Light Brown Hair



(まあ,「金髪のジェニー」というよりは「栗毛のジーニー」が近いのですが,今回は置いておきます。)

では,どうして坂本さんはフォスターの曲を沖縄ふうにしたのか?

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彼はこのように語っています。

面白いからってエスニックなものを使うことには常に警戒感があります。
「耳遊び」としてエスニックなものを使うのではなく,入り組んだ組み替えを行ったのが Beauty。

フォスターの曲「金髪のジェニー」を持ってきてオキナワチャンズに聴かせたら「これ沖縄の曲じゃないの?」って彼女らが物凄く喜んだんです。
「何これ? 沖縄の曲?」
「いやいや,アメリカのフォスターって人が作った曲」
「いやそんなはずない。絶対沖縄の曲だ」


結局,彼女らによる歌詞を追加しました。最初は標準語だったのですが,坂本さんは説得して沖縄方言(うちなーの言葉)になったそうです。
ただのユニークな取り組みではなく,沖縄の言葉で歌うところに意味があるんですね。


ちょっと長くなりそうなので,つづく。



この記事へのコメント

2024年11月19日 06:02
おはようございます。

 いや~、面白いですね。
 私も門外漢なのでよく分からないのですが、、、
 坂本龍一さんの「ロマンス」は確かに琉球音階で十分に沖縄チックなのですが、リズムがエイトビートで、琉球音階をペンタトニックスケールとみると、アメリカンポップスとしても十分に通るんですよ。
 で、フォスターの「金髪のジェニー」ですが、原曲はアメリカンフォーク寄りの4拍子の曲ですね。でも、なんかゆっくりと揺れるようなバイブスがあって、それが沖縄生まれのポップスを想起させるのです。
 この類似性って、面白いですね。
2024年11月20日 06:30
あきあかねさん
おはようございます。
そうなのです。琉球音階については次回のテーマです。ただ,リズムやビートには注目していませんでした。
音楽は音階以外の要素もありますし,表現者によっても印象が変わってきますよね。坂本さんは奇をてらったわけでもなく,いろいろなことに挑戦したかったのだと思います。素晴らしいコラボです。