定義 辛党って?
前回,谷川俊太郎さんのことを書きましたが,これは1975年に出した詩集「定義」。

定義 - 谷川 俊太郎
私はこの詩集自体は持っていませんが,この本に収められている一部を読んだことがあります。

例えば,こんな詩があります・・・。
コップへの不可能な接近
それは底面をもつけれど頂面をもたない一個の円筒状を
していることが多い。それは直立している凹みである。
重力の中心へと閉じている限定された空間である。それ
は或る一定量の液体を拡散させることなく地球の引力圏
内に保持し得る。(以下略)
こんな感じで全部で35行,谷川さんは「コップ」というものを定義しようとします。
日本語の言葉を定義をしたものが国語辞典です。
国語辞典について毎週楽しみにしているラジオ番組が「国語辞典サーフィン」です。

先日,この番組で取り上げた言葉が「辛党」。みなさんは「辛党」をどう定義しますか?
番組の冒頭で街角インタビューで「辛党ってどういう意味?」と定義してもらいます。
多くの人々は「からいものを好む人」「甘党の逆で,からいものが好きな人」と答えました。
そうなのでしょうか?
中には「からいものが好きで,お酒が好きな人」と答えた人もいました。
私が持っている伝統的な定義でおなじみの岩波国語辞典では・・・
からとう【辛党】酒好きな人。左党。⇔ 甘党

「辛いもの好き」なんて一言も書いていません。
でも,新しい意味を積極的に取り上げる三省堂国語辞典(第八版)では・・・
①酒のみ。酒の好きな人。②からい食品が好きな人。
と2番目の意味として出てきました。
しかし,明鏡国語辞典(第三版)では・・・
酒類を好む人。左党。▷辛い食べ物を好む人の意で使うのは俗用。
「辛いもの好き」は俗用としています。
つまり,原義は「酒好き」だが,最近は「辛いもの好き」で使う人が多い,ということでしょう。
気になるのは「辛党」の定義に出てくる「左党」です。岩波国語辞典を見てみましょう。
さとう【左党】①急進的・革新的な政党。②酒が好きな人。上戸。左利き。
ひだりきき【左利き】②酒に強いこと。酒に強い人。
なぜ「左」が「酒」につながるのか!?
先ほどのラジオ番組よると,語源は鉱夫が使った言葉だそうです。

鉱山で働く人は,右手でツチ(鎚)を持ち,左手でノミ(鑿)を持ちます。

「左手」→「鑿手」→「飲み手」
ダジャレですね。「ノミを持つ手」が「飲み手」として,「左党」「左利き」が「酒飲み」「酒好き」の意味になりました。
ちなみに岩波国語辞典には「右利き」は載っていません。
マジョリティー過ぎて載せる必要がないということか・・・。

定義 - 谷川 俊太郎
私はこの詩集自体は持っていませんが,この本に収められている一部を読んだことがあります。

例えば,こんな詩があります・・・。
コップへの不可能な接近
それは底面をもつけれど頂面をもたない一個の円筒状を
していることが多い。それは直立している凹みである。
重力の中心へと閉じている限定された空間である。それ
は或る一定量の液体を拡散させることなく地球の引力圏
内に保持し得る。(以下略)
こんな感じで全部で35行,谷川さんは「コップ」というものを定義しようとします。
日本語の言葉を定義をしたものが国語辞典です。
国語辞典について毎週楽しみにしているラジオ番組が「国語辞典サーフィン」です。

先日,この番組で取り上げた言葉が「辛党」。みなさんは「辛党」をどう定義しますか?
番組の冒頭で街角インタビューで「辛党ってどういう意味?」と定義してもらいます。
多くの人々は「からいものを好む人」「甘党の逆で,からいものが好きな人」と答えました。
そうなのでしょうか?
中には「からいものが好きで,お酒が好きな人」と答えた人もいました。
私が持っている伝統的な定義でおなじみの岩波国語辞典では・・・
からとう【辛党】酒好きな人。左党。⇔ 甘党

「辛いもの好き」なんて一言も書いていません。
でも,新しい意味を積極的に取り上げる三省堂国語辞典(第八版)では・・・
①酒のみ。酒の好きな人。②からい食品が好きな人。
と2番目の意味として出てきました。
しかし,明鏡国語辞典(第三版)では・・・
酒類を好む人。左党。▷辛い食べ物を好む人の意で使うのは俗用。
「辛いもの好き」は俗用としています。
つまり,原義は「酒好き」だが,最近は「辛いもの好き」で使う人が多い,ということでしょう。
気になるのは「辛党」の定義に出てくる「左党」です。岩波国語辞典を見てみましょう。
さとう【左党】①急進的・革新的な政党。②酒が好きな人。上戸。左利き。
ひだりきき【左利き】②酒に強いこと。酒に強い人。
なぜ「左」が「酒」につながるのか!?
先ほどのラジオ番組よると,語源は鉱夫が使った言葉だそうです。

鉱山で働く人は,右手でツチ(鎚)を持ち,左手でノミ(鑿)を持ちます。

「左手」→「鑿手」→「飲み手」
ダジャレですね。「ノミを持つ手」が「飲み手」として,「左党」「左利き」が「酒飲み」「酒好き」の意味になりました。
ちなみに岩波国語辞典には「右利き」は載っていません。
マジョリティー過ぎて載せる必要がないということか・・・。
この記事へのコメント
「定義付け遊び」等と言うゲームも昔あったのですが、、、言葉遊びとしては結構高等なゲームでしたね。
近年、漢字「辛」の意味が変化してきていますね。昭和50年位までは「塩辛い」の意味が主だったのですが、平成に入った辺りから「スパイシー、舌が刺激を受ける、痛いような味、(中国語)で”辣”」の意味が主になってきました。
調理、料理の分野に「五味」と言う言葉がありますが、これが日本ではそもそも「甘、酸、辛、苦、酪」、つまり「甘味、酸味、塩味、苦味、旨味」の意味だったんです。ただ、この「五味」と言う考え方は中国大陸から来た考え方でして、中国大陸では「辛」は「からみ(辣)」でした。中世の日本ではこの「辣」に相当する調味料が貴重でしたので(胡椒は日本には8世紀に入って来ています)、和食の味を構成する要素にはならなかった、という事だったようです。
最近は和食にもエスニックな要素が多分に取り入れられるようになっていますので、「辛」は「辣」に固定しても良いのかもしれませんね。そうなると、「五味」ではなく、「六味」になってしまうのかもしれませんけど(笑)
おはようございます。
「辛党」の「辛」が塩辛いを表すことは番組の中でも取り上げられ,次回の記事でも取り上げました。
おっしゃる通り,「辛」の字から現代の人は spicy, hot の意味を思い浮かべますよね。
舌の味覚分布地図って結局,真偽の結論は出たか出ていないのか,ネット上でもあいまいみたいです。