Haiku in English on Sunday (640) 短日や旅の荷を解く膝の上

日曜日は俳句の紹介と英訳。
先日,谷川俊太郎さんの訃報を書いたばかりなのに,今年ある俳人もまた亡くなっていたことを今週になって知りました。
これまで何度もここで取り上げさせていただいた鷹羽狩行さんが今年の5月に亡くなったことを6月に俳人協会が発表していました。

鷹羽狩行.jpg

本名の高橋行雄(たかはし・ゆきお)の区切りを変えて鷹羽狩行(たかは・しゅぎょう)になりました。

これまで取り上げた俳句です。

天瓜粉しんじつ吾子は無一物
みちのくの星入り氷柱われに呉れよ
母の日のてのひらの味塩むすび
摩天楼より新緑がパセリほど
乗りてすぐ市電灯ともす秋の暮
紅梅や枝々は空奪ひあひ
七夕や別れに永久とかりそめと
一本が鳴きたちまちに蝉の森
とある一枚の賀状を栞とす
スケートの濡れ刃携へ人妻よ

あれ,あの句が検索しても出てこない。取り上げたと思っていたもう1句があるのですが,どうも取り上げていなかったようです。
彼が出演していたテレビで知り暗唱までしていて愛着があったのでここで取り上げたと思い込んでいました。

短日や旅の荷を解く膝の上  鷹羽狩行
(たんじつやたびのにをとくひざのうえ)

「狩」2002年1月号掲載。
「狩」は鷹羽さんが主宰する俳誌ですが,創刊40周年を迎えた平成30年12月号で終刊となったようです。

3takaha.jpg

その1年前には「私の年齢と健康状態を考え」と終刊の決意を書かれていることから,思うところがあったのでしょうか。

「短日」は冬の季語で,他に「日短」「日短し」「暮早し」「暮易し」などがあります。
秋分から日暮れは早くなり当時にピークを迎えます。日暮れの早さのほかにもそういう一日のことも言います。

きっと和室なのでしょう。冬の夕暮れ,小旅行から帰ってきてカバンを膝の上にのせ中身を整理しています。
部屋の明かりをつけずにいたのに,わずかの間に部屋は暗くなってきました。


こんな一瞬を切り取れる人ってそんなにいないと思います。
失礼かもしれませんが,まさに俳句を作るために生まれてきた人でした。


では,英訳してみます。

短日や旅の荷を解く膝の上  鷹羽狩行

Darkness has come
Put my traveling bag in order
On my lap



鷹羽さんのご冥福をお祈りいたします。



この記事へのコメント

2024年11月24日 07:31
おはようございます。

 この句、寂しげに見えるのは何故なんでしょうね。

 ところで、『膝の上』を『On my knees』と訳されたのですが、「On my lap」ではどうなのでしょう?
2024年11月24日 07:52
あきあかねさん
おはようございます。
ありがとうございます。あまり深く考えていませんでした。
確かに knee は膝頭が主の意味で,lap が通常単数で座った姿勢で子ども・手・ナプキンなどを置く部分,なので lap がよさそうです。
辞書の例文としては
hold a child on one's knee 子どもを膝に抱く(単数なので片膝を立てて抱いているのか)
sit on my lap 私のひざの上にのる
今日の一句は膝にカバンを載せているので lap がよさそうですね。
また,よく見かけるのは thigh ですが,これは「もも」「太もも」のニュアンスが強そうです。
ありがとうございました。ちゃっかり直しました。