「向日葵の咲かない夏」 感想

今年読んだ本で印象深かったのが,道尾秀介著「向日葵の咲かない夏」です。
以前から読んでみたいと思っていましたが,やっと読むことができました。

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本の帯にもありますが「100万人をだました,道尾秀介の原点」。そうなんですもう100万部を超えて売れているんです。

他にも本の帯を検索すると・・・
「直木賞作家最大のベストセラー 100万部突破!」
「8億円売れているどんでん返し!」
「2009年日本で一番売れた文庫」

などが見つかります。

ただ,この本は賛否が分かれるようで,いわゆる「いやミス」と呼ぶ人もいます。その理由は内容がけっして明るくはないことと,このことでしょう。

それは,文庫の裏表紙に書かれている内容紹介を読めばわかります。

向日葵の咲かない夏(新潮文庫) - 道尾秀介
向日葵の咲かない夏(新潮文庫) - 道尾秀介

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。

賛否の「否」は上の「一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた」という非現実を受け入れることができないからでしょう。

ネット上ではこんな感想が見つかります。
「ミステリーかと思いきやSFやホラー系でした。どんどん話がぶっとんでリアリティがなくなっていくため真面目に読むのがバカらしくなります。」
「作者はこの物語を本気で面白いと思いながら描いていたのか? 編集者さんも! どうしてGO を出した?」


このような感想を読むと悲しくなります。読み解き方には個人差があるのでしかたないのですが。そのような方にはこう言いたい。「これは一人称の独白ですよ」と。

この小説は主人公の少年の一人称独白部分と客観描写の部分が入り混じっています。
一人称独白部分は何でも語れる。それを客観的事実と思っていてはミステリーは読めないと思います。そこに大きなトリックがひそんでいる場合があります。いわゆる「○○トリック」です。(あえて伏字)

実は私も途中で読むのをやめようかと思いました。
でも,疑問に思っていたことが,後半に怒涛の伏線の回収が行われます。

本の帯にもありました。「すべての違和感が論理的」

読み終えて,もう一度プロローグ部分と最後の部分を読み返し,深い感動に襲われる。そんな読書体験はそう多くはないでしょう。

ちなみにこの小説は「このミステリーがすごい!2007年度版」で17位。同じ道尾秀介さんの「シャドウ」は3位に入っています。

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道尾秀介さんについてはこれまで何度か書いていますが,おもしろかったのが「いけない」

→ 道尾秀介著「いけない」

いけない (文春文庫) - 道尾 秀介
いけない (文春文庫) - 道尾 秀介

記事にはしたことないと思いますが,私がいちばん好きなのは「カラスの親指」です。

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫) - 道尾秀介
カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫) - 道尾秀介

年末年始の読書に彼の作品はどうでしょう。




この記事へのコメント

2024年12月26日 07:29
おはようございます。

 散々なクリスマスでしたね。もうじき仕事納めかと思うのですが、年越しは寝床で、ということにならなそうですか?

 この本、私もチェックを入れていた本でした。結構好き嫌いが分かれるようですね。かえってそういう方がひきつけられます。私、天邪鬼です(笑)
2024年12月27日 07:28
あきあかねさん
おはようございます。
なんか書き過ぎた感じもあるんですが,読解力のない人が感想をそのままアップしたのでは作家の努力が報われません。
最近は初日の出登山をしていますが,今年はそんな体力があるのかどうか。家で読書三昧も悪くないかな。