ソバを「すする」?「たぐる」?
前回,年越し蕎麦の一句について書きました。

「ソバを食べる」表現にはいろいろあります。「すする」が最も一般的だと思われますが「たぐる」(手繰る)という表現もあります。

この表現について,先日NHKのラジオ番組「国語辞典サーフィン」でこんな内容が放送されました。

新明解国語辞典 第八版
すする
〔ところてん・そば・かゆや、熱い茶などを〕強く吸うようにして、飲み込む。〔音を伴うことが多い〕「生血をすする/白魚の踊り食いをすする/鼻水をすする〔=垂れた鼻汁を、息と一緒に吸う〕/鼻をすする〔鼻水を啜(すす)る〕
たぐる
〔糸状のものを〕両手でかわるがわる動かして、手元へ繰り寄せる。「凧をたぐる/話の糸をたぐる/記憶をたぐる〔=一つひとつたどって思い出す〕/そばをたぐる」
ソバについては両方書いてありますが,その違いはよくわかりませんね。
岩波国語辞典 第八版
すする
①液体・麺などを、口で小刻みに吸いながら口に入れる。「茶をすする」
②たれた鼻じるを息といっしょに吸う。
たぐる
①両手を交互に動かして、手もとに引き寄せる。「綱をたぐる」
②たぐる(1)ように(細長いものを)動かす。
㋐たどって導き出す。「記憶をたぐってみて分かった」「筋をたぐればそういう事だ」
㋑相撲で、突っ張って来る相手の腕を引いて相手の体勢を崩す。「たぐっておいて突き落とす」
㋒麺類を箸で口に運ぶ。「そばをたぐる」
「麺類」「箸で」とあります。しかも②の原義が「細長いもの」で,箸で食べるものなのでうどんやスパゲティははじかれるでしょう。
三省堂国語辞典 第八版
すする
①音を立てて、口の中へ吸いこむ。「みそしるをすする・そばをすする」
②鼻じるを息とともに吸いこむ。
たぐる
①両手を順々に動かして、手もとへ引っぱる。「糸をたぐる」。
②もとのほうへ たどる。「記憶をたぐる」
③〔古風〕〔そばを〕いそがしくすする。
この辞書では「すする」に「音」に要素が加えられています。そして「たぐる」はソバ限定で,「忙しくすする」こと。
新選国語辞典 第十版
すする
①吸い上げて飲む。「みそしるをすする」
②鼻じるを吸いこむ。
たぐる
①手もとへくりよせる。「ロープをたぐる」
②順を追って引き出す。「記憶をたぐる」
③箸でつまんだそばを汁につけ、口からすすりこむ。
食べ方が詳しく書いてあります。ここでのソバは一度汁につけてからすする「もりそば」「ざるそば」限定ですね。
これまでの国語辞典の内容を総合すると・・・
「たぐる」は古い言い方で,忙しくざるそばやもりそばをすすることで,かけそばには使わない。

落語の世界では「二八そばをたぐる」というフレーズが出てきます。

これは「サライ」2016年11月号の特集「蕎麦は“もり” に窮まる」より。
やはり落語の世界ではざる・もりそばは「たぐる」もののようです。

なぜ,綱やロープを手もとへ引っ張る「たぐる」なのか?
これは江戸の職人さんの隠語で,ソバを「縄」と言ったそうです。ソバの食べ方を糸や綱をくり返し引っ張ることに見立て「ソバをたぐる」。
ざるそばやもりそばはもともとファストフードで,箸で少量をつまんで口に入れ,モグモグしている間に次の数本をとっておく。この繰り返しが続きます。
つまり・・・食べる行為は一部だけを見ると「すする」ですが,全体の動作は「たぐる」と言うことでしょう。
ただ,落語の世界以外ではあまり聞かない言葉になってきていますね。

「ソバを食べる」表現にはいろいろあります。「すする」が最も一般的だと思われますが「たぐる」(手繰る)という表現もあります。

この表現について,先日NHKのラジオ番組「国語辞典サーフィン」でこんな内容が放送されました。

新明解国語辞典 第八版
すする
〔ところてん・そば・かゆや、熱い茶などを〕強く吸うようにして、飲み込む。〔音を伴うことが多い〕「生血をすする/白魚の踊り食いをすする/鼻水をすする〔=垂れた鼻汁を、息と一緒に吸う〕/鼻をすする〔鼻水を啜(すす)る〕
たぐる
〔糸状のものを〕両手でかわるがわる動かして、手元へ繰り寄せる。「凧をたぐる/話の糸をたぐる/記憶をたぐる〔=一つひとつたどって思い出す〕/そばをたぐる」
ソバについては両方書いてありますが,その違いはよくわかりませんね。
岩波国語辞典 第八版
すする
①液体・麺などを、口で小刻みに吸いながら口に入れる。「茶をすする」
②たれた鼻じるを息といっしょに吸う。
たぐる
①両手を交互に動かして、手もとに引き寄せる。「綱をたぐる」
②たぐる(1)ように(細長いものを)動かす。
㋐たどって導き出す。「記憶をたぐってみて分かった」「筋をたぐればそういう事だ」
㋑相撲で、突っ張って来る相手の腕を引いて相手の体勢を崩す。「たぐっておいて突き落とす」
㋒麺類を箸で口に運ぶ。「そばをたぐる」
「麺類」「箸で」とあります。しかも②の原義が「細長いもの」で,箸で食べるものなのでうどんやスパゲティははじかれるでしょう。
三省堂国語辞典 第八版
すする
①音を立てて、口の中へ吸いこむ。「みそしるをすする・そばをすする」
②鼻じるを息とともに吸いこむ。
たぐる
①両手を順々に動かして、手もとへ引っぱる。「糸をたぐる」。
②もとのほうへ たどる。「記憶をたぐる」
③〔古風〕〔そばを〕いそがしくすする。
この辞書では「すする」に「音」に要素が加えられています。そして「たぐる」はソバ限定で,「忙しくすする」こと。
新選国語辞典 第十版
すする
①吸い上げて飲む。「みそしるをすする」
②鼻じるを吸いこむ。
たぐる
①手もとへくりよせる。「ロープをたぐる」
②順を追って引き出す。「記憶をたぐる」
③箸でつまんだそばを汁につけ、口からすすりこむ。
食べ方が詳しく書いてあります。ここでのソバは一度汁につけてからすする「もりそば」「ざるそば」限定ですね。
これまでの国語辞典の内容を総合すると・・・
「たぐる」は古い言い方で,忙しくざるそばやもりそばをすすることで,かけそばには使わない。

落語の世界では「二八そばをたぐる」というフレーズが出てきます。

これは「サライ」2016年11月号の特集「蕎麦は“もり” に窮まる」より。
やはり落語の世界ではざる・もりそばは「たぐる」もののようです。

なぜ,綱やロープを手もとへ引っ張る「たぐる」なのか?
これは江戸の職人さんの隠語で,ソバを「縄」と言ったそうです。ソバの食べ方を糸や綱をくり返し引っ張ることに見立て「ソバをたぐる」。
ざるそばやもりそばはもともとファストフードで,箸で少量をつまんで口に入れ,モグモグしている間に次の数本をとっておく。この繰り返しが続きます。
つまり・・・食べる行為は一部だけを見ると「すする」ですが,全体の動作は「たぐる」と言うことでしょう。
ただ,落語の世界以外ではあまり聞かない言葉になってきていますね。
この記事へのコメント
蕎麦を「手繰る」は俗語、江戸っ子の隠語だったんですよね。だからざるそばやもり蕎麦以外には使わない、関西では使わない、勿論うどんに対しても使わないのです。「小腹空いたなあ、ちょっと手繰っていくか」で通じる世界だった訳で、関西の「チョットちゃあ(茶)、シバいてくか」と同じ類です。
ちなみに、この「手繰る」から来た仙台弁が「タゴマル」です。
<私のホームページアドレスを入れるとエラーになってコメントが投稿できません。何故なんでしょうね?>
今、年越し蕎麦を夕飯にするか昼ご飯にするかで迷っています(笑)
おはようございます。
同じコメントが4分差くらいで来ていたので,トラブルがあったのですね。解消されるでしょうか。
「タゴマル」は宮城県以外にも東日本で使うところがあるようですね。私の第1のイメージは服や袖ではなく,マイクやオーディオの長いコードが絡まっている状態です。あとはロープや紐かなあ。でも,私の家族は服のイメージが強いみたいです。
「手繰る」でおもしろいのは「記憶を手繰る」で,記憶の断片を一つ一つ引っ張り出してくるイメージがいいなあ。