大根役者(2) 英語で ham(前編)

前回は下手な役者を表す「大根役者」について考えてみました。
これは青空文庫から北大路魯山人の「料理芝居」(1953年「独歩」)より。

だが、多くの場合もこの書なるものが、料理人と同じく名優の名技ではない。だから、その書が名技として尊敬の的にはならない。要は書家の書だからいけないのではない。大根役者の芝居だからいけないのだ。

また,これはアンパンマンのキャラクター「だいこんやくしゃ」

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「大根役者」には,大根は捨てるところがないから,何をやらせてもできる役者,という誉め言葉もあるようです。
こうしてみると日本語の「大根役者」は,けっこう生活に根付いた言葉になっているようです。

さて,これに相当する英語がなぜか「ハム」です。

3hamlet7ham.jpg

ham informal
an actor who performs with too much false emotion
あまりにも間違った感情で演じる役者


3hamlet8演劇.jpg

「大根役者」とは微妙に違うような気もしますが,テンションが違って役を演じる役者ですね。

なぜ「ハム」か?

これについては諸説あるようですが,その1つが「ハムレット」から来ているという説

なぜ「ハムレット」からかというと・・・

①演技の下手な役者ほど Hamlet,略して ham を演じたがるとする説。
②シェイクスピアの名作「ハムレット」は誰が演じてもそれなりにヒットするとする説。
③下手な役者はハムレットの役を解釈しきれず,オーバーに演じるとする説。


ハムレット(新潮文庫) - ウィリアム・シェイクスピア, 福田 恆存
ハムレット(新潮文庫) - ウィリアム・シェイクスピア, 福田 恆存

でも,これはどうも俗説のようです。

昔,役者のシルヴェスター・スタローンが伊藤ハムのCMに出ていたとき,来日した役者がCMを見て,「彼は自分の演技力をギャグにした」と評した逸話があるそうです。

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次回につづく。



この記事へのコメント

2025年01月09日 06:34
おはようございます。

 このシルヴェスター・スタローンと伊藤ハムのCMの話は聞いたことがあります。う~ん、確かにスタローンは演技や台詞回しがオーバー気味なところが有るのですが、それも彼の個性(俳優としての)なんじゃないですかねぇ…、ただ、それによって演じられる役の幅が狭まっているのは確かだと思います。

 私が「下手だなあ」と思った俳優は、「西部開拓史」のジェームズ・ステュアートです。「下手」というよりも「ミスキャストじゃないの?」という感じなのですけど… それ以外の「裏窓」等の映画での彼は、それなりの存在感がありましたからね。
 (ワイルドな感じの役の演技は、彼には似合わないように思えました)
2025年01月11日 07:44
あきあかねさん
おはようございます。
ジェイムズ・スチュアートですが「西部開拓史」は見ていませんが,彼のワイルドな演技は想像がつかないですね。私にとっては「スミス都に行く」の正義感ある青年,そしてヒッチコックの諸作品で,全部見ていると思います。「ロープ」「裏窓」「知りすぎていた男」「めまい」・・・「めまい」がいちばん好きかな。まあキム・ノヴァクの魅力もありますが(笑)。
スタローンは断ればよかったのになあ。