「がぜん」考(2) 誤解の背景

前回,「がぜん」が本来の「急に,突然」より「とても,断然」の意味で使われているという調査結果について書きました。

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「がぜん」を漢字で書くと「俄然」「にわかのごとし」ですから,「急に」が本来の意味であることがわかります。

大辞泉より・・・

がぜん【俄然】
1 にわかなさま。
 「毎年夏の初めに、多くの焼芋屋が—として氷水屋に変化するとき」〈漱石・それから〉

2 突然ある状態が生じるさま。急に状況が変わるさま。にわかに。
 「梅雨があけたら—暑くなった」


では,「急に」がどうして「とても」の意味で使われるようになったのか,NHK放送文化研究所では,その背景を次のように分析しています。

1 話しことばとしてふだん頻繁に使うものではないため,本来の意味とは異なる誤解がされやすい。

2 たとえば「がぜんやる気が出てきた」という文を耳にした人が,これを「とてもやる気が出てきた」と解釈したとしても,それほど大きな問題にはならない。

3 「ガ・ゼ」といった濁音が,何となく強調表現としての勢いを感じさせる。

4 発音の似ているものとして「断然」があり,ここからの類推が働いた。



私が共感するのは特に2と4でしょうか。

「がぜんやる気が出てきた!」と言った場合・・・

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「急にやる気が出てきた」「とてもやる気が出てきた」とどちらで解釈しても大きな問題にならないような気がします。
また,「がぜん」(俄然)は「だんぜん」(断然)と発音が似ていて,そちらに引っ張られた感じもします。

最後に,「がぜん」を強調の意味で使う,のは昭和の初期に流行したことがあると書いてあります。

次回につづく。





この記事へのコメント

2025年03月06日 07:12
おはようございます。

 私も先生と同じで、断然と発音が似ていることと、そのように間違えても、通常の場合大きな問題が起こらないからだと思います。文章に起こしても、校正が入るようなものでない限り、気付かれないでしょう。
 
 ん? 昭和初期の協調の意味で使う「がぜん」の流行? 何だろう? 「博多俄」ではないですよね? 漫画の「博多っ子純情」は昭和50年代でしたし…
2025年03月07日 06:04
あきあかねさん
おはようございます。
「博多にわか」,見たことはありましたが,この言葉初めて知りました。
昭和の流行については初めて聞きましたが,1930年の書籍に載っているのでその頃の流行なのでしょう。でも,使用例はもう無茶苦茶です(笑)。