「課金」は誰が誰に!?

毎週土曜日のお昼に放送されているNHKラジオ(R1)の番組「国語辞典サーフィン」から。

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先日の言葉は「課金」。みなさんはどうこの言葉を使いますか?
いちばん最近耳にするのは「オンラインゲームに課金する」のような例ではないでしょうか。課金のし過ぎ」で問題になることもあります。

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でも,冷静に考えれば,この言葉ちょっと変です。
「課金」つまり「金を課す」のは運営する会社が利用者に使う言葉。ゲームをする側は「課金される」側です。どこか主客逆転の感じがします。

私が持っている辞書を見てみましょう。
20世紀終盤の1998年に出版された広辞苑(第五版)には「課金」は見つかりません。

岩波国語辞典(第七版)では・・
かきん【課金】
使用(利用)料金を課すること。また,そのかね。


三省堂の新明解国語辞典(第七版)では・・・
かきん【課金】
賃借料・使用料などの料金を課すこと。また、その料金。「課金方式」


やはり業者側が使う言葉です。駐車場などは「時間課金制」で料金が決まることが多いです。

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利用者にとっては「支払い」なのに,「ゲームに課金する」という最近の使用法について国語辞典はどう説明しているのか,番組では最新の辞書を紹介していました。

小学館・新選国語辞典(第十版)・・・

新選国語辞典 第十版 - 金田一 京助, 佐伯 梅友, 大石初太郎, 野村 雅昭, 木村 義之
新選国語辞典 第十版 - 金田一 京助, 佐伯 梅友, 大石初太郎, 野村 雅昭, 木村 義之

かきん【課金】
①事業者が利用者に料金を課すること。
〔俗語〕インターネット上のサービスなどで,利用者が料金を支払うこと。また,その料金。「オンラインゲームに課金する」


ただし,利用者が「ゲームに課金する」は俗語扱いになっています。

でも,三省堂国語辞典(第八版)では・・・

三省堂国語辞典 第八版 - 見坊 豪紀, 市川 孝, 飛田 良文, 山崎 誠, 飯間 浩明, 塩田 雄大
三省堂国語辞典 第八版 - 見坊 豪紀, 市川 孝, 飛田 良文, 山崎 誠, 飯間 浩明, 塩田 雄大

かきん【課金】
①料金を課すこと。「時間課金制」
②課された料金をはらうこと。「趣味のオンラインゲームに課金する」〔21世紀になって広まった用法〕


広く言葉を受け入れる三省堂国語辞典らしく,俗語とはせずに,「課す」側と「払う」側の両方で使う言葉として載せています。

また,注意として,「お金をとる側の行動に使うことばが誤解されて,しはらう側にも使うようになった」
つまり,誤用が普及して普通の表現になったということですね。

パリ五輪では軽装備の「無課金おじさん」がちょっとした話題になりました。
ゴーグルもイヤーマフもつけずに銀メダルを獲得しました(右側)。

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「無課金」も払う側としての言葉ですね。


それにしても,いい番組だ。こんな放送が無料で聞けるなんて。課金してもいいくらい。いや,課金してもらってもいいくらいか。



この記事へのコメント

2025年03月10日 07:30
おはようございます。

 ええ、このオンラインゲーム場面で使われる「課金」ですが、最初聞いた時は大変混乱しました。どっちがどっちにお金を支払う仕組みだ? と、です。最近、こうした自動詞と他動詞の混用が良くあるので、文章全体から判断するしかないのかなあ、って思っています。
2025年03月11日 06:12
あきあかねさん
おはようございます。
私はこの手のことはしないのですが,最初聞いたときは「加金」と書くのかと思っていました。どんどんお金を払っていくから「課金」と「加金」が混同したのかなあなんて思っています。