「貸し切る」「貸し切り」も

短い記事です。
前回まで書いてきた,呼びかける側の行動に使うことばが誤解されて,応じる側にも使うようになった「課金」「募金」以外にも,同じ傾向の言葉があります。

それは「貸し切る」です。「貸し切り」という言い方もあります。
本来は貸す側の言葉です。

しかし,借りる側が「今日はこの会館を貸し切っています」なんて使つたり,「バスは貸し切りです」なんて言います。

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本来は「借り切る」なのでしょうが,いつの間にか「貸し切る」が応じる側でも使うようになっています。

「借り切る」は辞書にも載っていますし,漱石などの文章にも見つかります。

「思ひ出す事など」 夏目漱石
そうして裸連のいた部屋を借り切った。その次の部屋もまた借り切った。しまいには新築の二階座敷を 四間 ( よま ) ともに 吾有 ( わがゆう ) とした。


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確かに最近は「借り切る」はあまり聞きません。応じる側も「貸し切る」を使いますね。

このシリーズ,次回がラストかな。



この記事へのコメント

2025年03月13日 07:14
おはようございます。

 確かにそうですね。「借り切る」は最近ほとんど聞きません。私が小学校の時はまだ「借り切る」は普通に使われていて、「貸し切る」と使い分けも普通になされていました。何時ごろだろう、「貸し切る」一辺倒になったのは? ’90年代くらいかなあ?

 ところで、漱石の文に『ともに 吾有 とした』とありましたが、この「 吾有」と言う言い方、初めて見ました。「占有」、いや「専有」の意味なのかな? こういう言い方って、書生口調ですね。
2025年03月14日 06:07
あきあかねさん
おはようございます。
「今日は座敷を借り切って宴会じゃ」でも意味はじゅうぶん通じますが,最近はやはり「貸し切りじゃ」と言ったほうが自然ですね。20世紀後半にこのような転換が起きたのでしょうか。
「吾有」については私も何か引っ掛かりました。振り仮名は原文通りなのでそういう言い方があったのでしょうか。