配付? 配布?
学校では最近,保護者へのお知らせをメール配信することが多いのですが,紙媒体でお知らせすることもまだあります。
また,様々な団体からのチラシなども届きます。
それらのものを配る集配係などをおく学級もあり,係の生徒は毎日配っています。
ものを配ることを「はいふする」と言いますが,「配付」と「配布」の2つの表記があります。
どう違うのか,青空文庫でその使用例を見てみます。
「支倉事件」 甲賀三郎
急いで出て行った大島警部補はやがて興奮した面持で帰って来た。
「北紺屋署からだ」
彼は早口に云った。
「今朝配付の写真に該当する人物が、先般来度々同署へ出頭したそうだ」
「何、なんですって!」
根岸と石子の両刑事は同時に叫んだ。
「不苦心談」 森鴎外
私は自分の訳本ファウストについて、一度心の花に書いたことがある。その中に正誤表を作った事や、象嵌(ぞうがん)で版型を改めた事を言った。然るにその正誤表がまだ世間に行き渡っていない。そこで正誤表を作ったと云うのは虚言だと云う人がある。あれは虚言ではない。正誤表は先ず第一部のが出来て、多少世間に出ている。次いで第二部のが出来て、これも多少世間に出ている。就中(なかんずく)私の手許から贈遺した本には、正誤表の出来た後、それを添えなかったことはない。書肆(しょし)富山房も誠意がないではなかったが、買った本は誰が買ったか分からぬので、正誤表の送りようがないと云うことであった。帝国劇場で第一部の興行のあった時、第一部の正誤表は出来ていたので、富山房はそれを劇場で配布しようかとも云った。しかし私は本を読む人と劇を観る人とは自ら別だから、それは無益だろうと云った。さて今既に印刷し畢(おわ)っているファウスト考には、右の第一部、第二部の正誤表を合併して、更に訂正を加えて添えてあるのである。

上の「配付」は,警察署内で配られた容疑者の写真の男が出頭してきた,というのです。
下の「配布」は,訳本に間違いが見つかり,その正誤表をどう配ろうかと作者と出版社が悩んでいる様子が描かれています。
日本国語大辞典(日国)でその定義を見てみましょう。
はい‐ふ【配付】
〘 名詞 〙 ひとりひとりの手に渡るようにくばること。
[初出の実例]「厨丁、双竹籃を担ふて四方に配附す」(出典:東京新繁昌記(1874‐76)〈服部誠一〉二)
はい‐ふ【配布】
〘 名詞 〙 ひろく行き渡るようにくばること。
[初出の実例]「若し一月を括って之を買ひば、則ち社より之を配布し」(出典:東京新繁昌記(1874‐76)〈服部誠一〉初)
初出の例が同じ出典なのがおもしろいところですが・・・
「配付」は一人一人の手にわたるように配ること。
「配布」は広く世に行き渡るように配ること。
先ほどの小説で,容疑者の写真を駅前で配ったのでは困ります。あくまでも警察内での出来事ですね。
「配付」の使用例としては,「議案の配付」「保護者への授業参観の案内を配付する」など。
これは,会議の「配付資料」。

一方,「配布」は「駅前でビラを配布する」「ちらしを配布する」など。

こだわらない人もいますが,本来はこのような違いがあるのですね。
また,様々な団体からのチラシなども届きます。
それらのものを配る集配係などをおく学級もあり,係の生徒は毎日配っています。
ものを配ることを「はいふする」と言いますが,「配付」と「配布」の2つの表記があります。
どう違うのか,青空文庫でその使用例を見てみます。
「支倉事件」 甲賀三郎
急いで出て行った大島警部補はやがて興奮した面持で帰って来た。
「北紺屋署からだ」
彼は早口に云った。
「今朝配付の写真に該当する人物が、先般来度々同署へ出頭したそうだ」
「何、なんですって!」
根岸と石子の両刑事は同時に叫んだ。
「不苦心談」 森鴎外
私は自分の訳本ファウストについて、一度心の花に書いたことがある。その中に正誤表を作った事や、象嵌(ぞうがん)で版型を改めた事を言った。然るにその正誤表がまだ世間に行き渡っていない。そこで正誤表を作ったと云うのは虚言だと云う人がある。あれは虚言ではない。正誤表は先ず第一部のが出来て、多少世間に出ている。次いで第二部のが出来て、これも多少世間に出ている。就中(なかんずく)私の手許から贈遺した本には、正誤表の出来た後、それを添えなかったことはない。書肆(しょし)富山房も誠意がないではなかったが、買った本は誰が買ったか分からぬので、正誤表の送りようがないと云うことであった。帝国劇場で第一部の興行のあった時、第一部の正誤表は出来ていたので、富山房はそれを劇場で配布しようかとも云った。しかし私は本を読む人と劇を観る人とは自ら別だから、それは無益だろうと云った。さて今既に印刷し畢(おわ)っているファウスト考には、右の第一部、第二部の正誤表を合併して、更に訂正を加えて添えてあるのである。

上の「配付」は,警察署内で配られた容疑者の写真の男が出頭してきた,というのです。
下の「配布」は,訳本に間違いが見つかり,その正誤表をどう配ろうかと作者と出版社が悩んでいる様子が描かれています。
日本国語大辞典(日国)でその定義を見てみましょう。
はい‐ふ【配付】
〘 名詞 〙 ひとりひとりの手に渡るようにくばること。
[初出の実例]「厨丁、双竹籃を担ふて四方に配附す」(出典:東京新繁昌記(1874‐76)〈服部誠一〉二)
はい‐ふ【配布】
〘 名詞 〙 ひろく行き渡るようにくばること。
[初出の実例]「若し一月を括って之を買ひば、則ち社より之を配布し」(出典:東京新繁昌記(1874‐76)〈服部誠一〉初)
初出の例が同じ出典なのがおもしろいところですが・・・
「配付」は一人一人の手にわたるように配ること。
「配布」は広く世に行き渡るように配ること。
先ほどの小説で,容疑者の写真を駅前で配ったのでは困ります。あくまでも警察内での出来事ですね。
「配付」の使用例としては,「議案の配付」「保護者への授業参観の案内を配付する」など。
これは,会議の「配付資料」。

一方,「配布」は「駅前でビラを配布する」「ちらしを配布する」など。

こだわらない人もいますが,本来はこのような違いがあるのですね。
この記事へのコメント
これも、ビジネスメールなどでは迷う選択ですね。でも、漢字の意味を考えると、おのずと選択もし易くなるかもしれません。「付」は1対1で「つける」イメージ、「布」は広く「ひろげる」イメージですね。
遍(あまね)く多くの人に、同じように配るのであれば、「配布」ですし、相手の顔を思い浮かべ、その人に届けるイメージであれば「配付」ですね。
学校の場面であれば、試験の問題用紙をクラス全員に配るのは「配布」、採点された解答用紙を各人に戻すのであれば、「配付」となると思います。
おはようございます。
一般的には「配布」が多くみられるようで,それで統一感もありますが,厳密には「配付」とは一線を画すと思います。こんなことにこだわっているのは学校現場だけなんでしょうか。