Haiku in English on Sunday (658) みなちがふ靴のへりぐせつちふれる

日曜日は俳句の紹介と英訳。
春の季語を並べると・・・まだ寒さも残りますが(余寒),広瀬川の白鳥もいつの間にか北へ帰り(鳥帰る),我が家の庭先にはが咲いています。

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残雪と呼ぶには少し早すぎますが,遠山の雪も減ってきたように思います。

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先日,26日の朝,不思議な太陽を見ました。空はかすみ,太陽は真っ赤。

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この原因は黄砂でしょう。この後,これまで経験したことのない強風が吹き荒れ,仙台周辺では新幹線や在来線,そして高速道路も止まりました。

「黄砂」「黄塵」春の季語で,俳句の世界では「霾」(つちふる)と言われ,動詞としても使われます。
3月から4月にかけて,中国やモンゴルの黄土地帯で舞い上がった大量の砂塵が偏西風に乗って日本まで飛んでくる現象を言います。

みなちがふ靴のへりぐせつちふれる  川上弘美
(みなちがうくつのへりぐせつちふれる)

「俳句発想法歳時記 春」(草思社文庫)より。

文庫 俳句発想法歳時記〔春〕 (草思社文庫 ひ 1-3) - ひらの こぼ
文庫 俳句発想法歳時記〔春〕 (草思社文庫 ひ 1-3) - ひらの こぼ

小説家で俳人の川上弘美さんの句を取り上げるのは3度目です。

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句集「機嫌のいい犬」に収められた300句のうちの1句。

機嫌のいい犬 - 川上 弘美
機嫌のいい犬 - 川上 弘美

靴底の減り方にはその人の歩き方が出るそうです。
かかとの内側が減る人,外側が減る人,つま先だけ減る人,左右で減り方が違う人。
私は摺り足で歩く癖があり,かかとの外側がよく減ります。(写真はイメージ)

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靴底は大げさに言えば,その人の人生を背負って歩んでいるのですね。

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黄砂が降るような日,雑踏の人々の靴を眺めていたのでしょうか。
あるいは,並んだ靴底に黄砂がついていたんでしょうか。

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薄く積もった黄砂の上に,行き交った靴底の跡がついていたとも考えられます。

「みなちがふ」がこの句の命でしょう。
「霾」(つちふる)は人知を超えた自然現象。自然現象は人の個性なんて気にもかけません。
でも作者の目は間違いなく,靴底に一人一人の違いを見つけたのです。


では,英訳してみます。

みなちがふ靴のへりぐせつちふれる  川上弘美

Each shoe sole has
Its own type of wearing out
Yellow dust is falling



「黄砂」は yellow sand とする辞書もありますが,それは砂自体を指すことが多く,東アジア特有の現象として yellow dust が一般的なようです。
世界的な視点で見てアジアを強調する場合は Asian dustChina dust storms なども使われます。

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「黄砂で韓国は窒息」


この記事へのコメント

2025年03月30日 07:15
おはようございます。

 この句良いですねぇ…、人間味があって私は好きです。
 靴の減り癖ですが、歳を取るにつれても変わってきますよ。私も、若い時は母指球のところが一番先に穴が開いたのですが、今は踵の内側が先に穴が開きます。

 今朝、窓から外を見ましたら、近所のお宅の桜が花開いていました。山桜系統の木なのかしら、紅色の花と新緑の緑のコントラストが綺麗でした。
2025年03月31日 05:41
あきあかねさん
おはようございます。
私は靴の減りが早く,すぐダメにしてしまいます。歩き方って個性ですよね。
仙台の開花宣言はどうも30日から延びたようです。今日か明日なんでしょうか。それにしても,昔から比べれば早くなりましたが。