earworm(4) A Literary Nightmare
前回,イヤーワーム earworm についてマーク・トウェインに関する記述のウソかホントかについて書きました。

× 19世紀にはマーク・トウェインも「トム・ソーヤーの冒険」で「ひとりでに音楽が頭の中で流れ始める」と書いています。
どうも,これは「トム・ソーヤーの冒険」を書いたマーク・トウェインの文章の中に「ひとりでに音楽が頭の中で流れ始める」というイヤーワームの現象を書いた記述がある,という文からの誤解のようです。
もちろん,マーク・トウェインの時代には earworm という言葉はまだありません。
いろいろ探してみると,マーク・トウェインの短編「A Literary Nightmare」に行き当たります。

残念ながら私の本棚のマーク・トウェイン作品ではこれは見つかりません。

もしかすると翻訳はされていないかもしれません。
英語版 Wikipedia でこの小説について見てみましょう。
"A Literary Nightmare" is a short story written by Mark Twain in 1876. The story is about Twain's encounter with an earworm, or virus-like jingle, and how it occupies his mind for several days until he manages to "infect" another person, thus removing the jingle from his mind. The story was also later published under the name "Punch, Brothers, Punch!"
「文学の悪夢」は1876年にマーク・トウェインによって書かれた短編小説です。物語はトウェインがイヤーワーム,あるいはまるでウィルスのようなジングルに遭遇し,それが数日間彼の心を占領し,他の人になんとか「感染」させることでジングルを消し去るまでを描いています。この物語はのちに「パンチ,ブラザーズ,パンチ!」という名で出版されました。

では,その短編小説の出だしを見てみましょう。
A Literary Nightmare (1876) by Mark Twain
Will the reader please to cast his eye over the following verses, and see if he can discover anything harmful in them?
" Conductor, when you receive a fare,
Punch in the presence of the passenjare !
A blue trip slip for an eight-cent fare,
A buff trip slip for a six-cent fare,
A pink trip slip for a three-cent fare,
Punch in the presence of the passenjare !
CHORUS.
Punch, brothers ! punch with care !
Punch in the presence of the passenjare ! "
I came across these jingling rhymes in a newspaper, a little while ago, and read them a couple of times. They took instant and entire possession of me. All through breakfast they went waltzing through my brain; and when, at last, I rolled up my napkin, I could not tell whether I had eaten anything or not.
読者諸君には以下の詩を見て,何か有害なものを見つけてもらえるだろうか?
「車掌さん,運賃を受け取るとき
乗客の面前でパンチ!
8セントの運賃には青い乗車券
6セントの運賃には黄褐色の乗車券
3セントの運賃にはピンクの乗車券
乗客の面前でパンチ!
合唱
兄弟よ,パンチ! 慎重にパンチ!
乗客の面前でパンチ!」
少し前のこと,私はある新聞でこの軽快な韻文に出会い,何度か読み返しました。この韻文はたちまちすっかり私の心に住みついたのです。朝食中はずっと頭の中でワルツのように舞い,ついには,ナプキンを外すときには,何かを食べたのか,食べなかったのかさえわからなくなったのです。
それにしても変な詩ですよね。
マーク・トウェインはこの変な韻文が頭から離れないという体験をしてしまいました。
ちょっと時間がないので,今日はここまでです。
たぶん,つづく。

× 19世紀にはマーク・トウェインも「トム・ソーヤーの冒険」で「ひとりでに音楽が頭の中で流れ始める」と書いています。
どうも,これは「トム・ソーヤーの冒険」を書いたマーク・トウェインの文章の中に「ひとりでに音楽が頭の中で流れ始める」というイヤーワームの現象を書いた記述がある,という文からの誤解のようです。
もちろん,マーク・トウェインの時代には earworm という言葉はまだありません。
いろいろ探してみると,マーク・トウェインの短編「A Literary Nightmare」に行き当たります。

残念ながら私の本棚のマーク・トウェイン作品ではこれは見つかりません。

もしかすると翻訳はされていないかもしれません。
英語版 Wikipedia でこの小説について見てみましょう。
"A Literary Nightmare" is a short story written by Mark Twain in 1876. The story is about Twain's encounter with an earworm, or virus-like jingle, and how it occupies his mind for several days until he manages to "infect" another person, thus removing the jingle from his mind. The story was also later published under the name "Punch, Brothers, Punch!"
「文学の悪夢」は1876年にマーク・トウェインによって書かれた短編小説です。物語はトウェインがイヤーワーム,あるいはまるでウィルスのようなジングルに遭遇し,それが数日間彼の心を占領し,他の人になんとか「感染」させることでジングルを消し去るまでを描いています。この物語はのちに「パンチ,ブラザーズ,パンチ!」という名で出版されました。

では,その短編小説の出だしを見てみましょう。
A Literary Nightmare (1876) by Mark Twain
Will the reader please to cast his eye over the following verses, and see if he can discover anything harmful in them?
" Conductor, when you receive a fare,
Punch in the presence of the passenjare !
A blue trip slip for an eight-cent fare,
A buff trip slip for a six-cent fare,
A pink trip slip for a three-cent fare,
Punch in the presence of the passenjare !
CHORUS.
Punch, brothers ! punch with care !
Punch in the presence of the passenjare ! "
I came across these jingling rhymes in a newspaper, a little while ago, and read them a couple of times. They took instant and entire possession of me. All through breakfast they went waltzing through my brain; and when, at last, I rolled up my napkin, I could not tell whether I had eaten anything or not.
読者諸君には以下の詩を見て,何か有害なものを見つけてもらえるだろうか?
「車掌さん,運賃を受け取るとき
乗客の面前でパンチ!
8セントの運賃には青い乗車券
6セントの運賃には黄褐色の乗車券
3セントの運賃にはピンクの乗車券
乗客の面前でパンチ!
合唱
兄弟よ,パンチ! 慎重にパンチ!
乗客の面前でパンチ!」
少し前のこと,私はある新聞でこの軽快な韻文に出会い,何度か読み返しました。この韻文はたちまちすっかり私の心に住みついたのです。朝食中はずっと頭の中でワルツのように舞い,ついには,ナプキンを外すときには,何かを食べたのか,食べなかったのかさえわからなくなったのです。
それにしても変な詩ですよね。
マーク・トウェインはこの変な韻文が頭から離れないという体験をしてしまいました。
ちょっと時間がないので,今日はここまでです。
たぶん,つづく。
この記事へのコメント
たしかに、この詩は頭に残りますよね。単に韻を踏んでいるだけでなく、次の言葉に繋がるように配置されていますね。特に、
「A blue trip slip 」
「A buff trip slip 」
「A pink trip slip」
という対句?はリズムが小気味よくて、ずうっと頭に残ります。トウェインはこれの事を言っていたんですね!
これってマザーグースのように聞こえるのですけど、別なのでしょうね。
おはようございます。
マザーグースにはないと思うんですが,通じるものはあるような気がします。
いったいこのフレーズは何を言っているんでしょうね。新聞というところが気になりますが。
韻文は特に心に残りますよね。