「われら闇より天を見る」(1) 読了(ネタバレなし)

先週末,こんなネットニュースを見ました。
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イギリスには名だたるミステリ作家たちが集う英国推理作家協会(CWA)があり,年に1度,アメリカの「エドガー賞」と並ぶミステリ賞の世界最高峰「ダガー(Dagger)賞」(Daggerは短剣の意味)を授けている。
今年もまもなくロンドンで授賞式が開催されるが,その翻訳部門の最終候補に,日本作家2人の名が挙がっている。

日本勢は過去に横山秀夫の「64(ロクヨン)」,東野圭吾の「新参者」,伊坂幸太郎の「マリアビートル」が候補に挙がりながら,まだ受賞者は出ていない。

今回のファイナリストである「ババヤガの夜」の王谷晶(おうたに・あきら)と「BUTTER」の柚木麻子(ゆずき・あさこ)は,偶然にも同年(1981年)生まれの女性作家。

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残念ながら,両作品ともに読んだことはありません。
もし受賞すれば快挙ですね。

ダガ―賞と言えば,2021年のダガ―賞の最高峰,ゴールド・ダガ―賞を受賞した「われら闇より天を見る」を最近読み終えました。

われら闇より天を見る - クリス ウィタカー, 鈴木 恵
われら闇より天を見る - クリス ウィタカー, 鈴木 恵

途中まで読めば,表紙の4人が誰なのか,わかるでしょう。

ちなみに,私が持っているのは2022年8月発売の「初版」。
初版でこの帯。早川書房がどれだけ推していたかがわかるでしょう。

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裏の帯には「翻訳ミステリ史上,最高のラスト1行」とあります。
これは「衝撃の1行」とか「1行ですべてがひっくり返る」とかではありません。

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「深く」「余韻のある」「最高の」1行なのです。

私が海外ミステリー小説を初版で買うなんて,珍しいのですが,その前あたりに読んでいたのが,これまた最高の「ザリガニの鳴くところ」

ザリガニの鳴くところ (ハヤカワ文庫NV) - ディーリア オーエンズ, 友廣 純
ザリガニの鳴くところ (ハヤカワ文庫NV) - ディーリア オーエンズ, 友廣 純

過去記事 → 「ザリガニの鳴くところ」(ネタバレなし)

これで,最新の海外ミステリーに抵抗がなくなりました。

「われら闇より天を見る」が出版された年の12月,この小説は「このミス」「文春」の両方で海外部門1位を獲得しました。
なんとアンソニー・ホロヴィッツの5連覇を阻止したのです。

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ちなみに著者のクリス・ウィタカー Chris Whitaker はイギリス人男性作家。
舞台がアメリカなのは,土地の広さや警察機構など,そのほうが書きやすいんだそうです。

最後に,原題は「We Begin at the End」。「人は終わりから始める」という意味。

この言葉,少なくとも2度出てきます。

P.286 主人公ダッチェスの祖父ハルの言葉。
「人は終わりから始めるのさ」

P.344 ダッチェスが友人トマスにいう言葉。
「人は終わりから始めるんだって,ハルが言ってた」

ダッチェスは覚えていたんだ。
いろいろな登場人物がいるので,特に海外ミステリーは混乱しがちですが,宮崎美子さんのHP「よしよし」では「ダッチェス」を中心にさえ読んでいけば,大丈夫と言っていました。まあ,そうかな。

邦題が「われら闇より天を見る」は訳者と出版社の意向でしょうか。


買ってからしばらく置いておいたのですが,今回読んでよかったです。


ちょっと続く。



この記事へのコメント

2025年07月01日 06:28
おはようございます。

 新刊を追うのをやめてもう久しいのですが…、エドガー賞もダガー賞も、まだあったのですね。
 ちょっと気になったのが、この本の著者が舞台をアメリカにした理由が、『土地の広さ』と『警察機構』などとしている事でした。私の記憶では、警察機構はアメリカの方がずうっと複雑なんですけど、その方が小説になりやすいのでしょうかね、ちょっと引っかかりました。
 (アメリカにはまだ「賞金稼ぎ」が公式に存在しますからね)
2025年07月02日 05:57
あきあかねさん
おはようございます。
作者の言葉については,次の回で書かせてもらいました。町の警察官とFBIとの対立構造がよく映画でも描かれますよね。それに,この作品はちょっとやそっとでは子供が移動できない距離が必要なんです。アメリカはもってこいかな。