鶉衣(4) 大事な茶碗を割ってしまったら

今回も横井也有の「鶉衣」から,ラジオで安田登さんが紹介してくれた話から。

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みなさんは大切な茶碗を割ってしまったらどうしますか?
私なら新しいものを買うしか手はなさそうです。

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也有は高価な抹茶茶碗を割ってしまったことについて何か文章を書いてくれ,と頼まれてこんなことを書きました。


大極の氣二つに破れて陰陽となる。
その陰陽の又あふからに、夫婦いもせの契ともなれり。
おもしろし,この茶碗のまどかに,望月の隈なきのみかはと,一たび割れて有明の盈虚(えいきょ)を示し,會者定離を打かへして,離れたるものの又あふたるぞ,仏も我を折り給ふべき。


茶碗が割れたことによってわかったことがある。
完璧な茶碗は満月のようなもの。それが割れて陰と陽になった。
ひとたび割れたことによって,月も満月もあるし半月もあるし三日月もあるし,月にもいろんな月がある,これがわかったのだ。

安田さんは触れませんでしたが,もちろん,これは兼好法師の「徒然草」「花はさかりに,月はくまなきをのみ見るものかはを踏まえていますね。

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また,「古事記」「日本書紀」以来の男女を陰陽に例えたことを踏まえ,茶碗が割れて陰と陽になった。
2つを合わせることによって新たなものを生み出すことができる。

この図は安田さんがウェブマガジンで書いた文章から。

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「陰陽の又あふからに」は日本古来の伝統技術の「金継ぎ」を表しています。

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茶碗が割れたことは,盈虚(=月の満ち欠け)という真理を教えてくれる。
會者定離(えしゃじょうり)は仏教用語で,会うものは必ず離れるもの。
それなのに,再び茶碗が1つになった! これには仏様も自分の間違いを認めるだろう!

ちょっと無茶苦茶ですね(笑)。

この後には,茶碗が割れたから,この(名)文ができたではないか,と開き直っています。

最後には,こんな歌を詠んでいます。

はなれたら継げ はなれたらつげ幾度も
 破れ世の中にあらむかぎりは



俳諧的生き方のヒント。何事にもめげない人ですね。



この記事へのコメント

2025年07月10日 06:52
おはようございます。

 いや~、お茶目でかわいい人ですね、この也有は。日常の些細な事にも世の心理を見つけ出し、感心することが出来るのですから、そりゃあ世人とは違うユニークな俳句も創りますよ。
2025年07月11日 06:03
あきあかねさん
おはようございます。
面白い人です。人生何かがあると,最悪を想定しそうですが,この人はいちばんいい方向に考える人です。こんな人になれたらいいんですがねえ。