村上春樹氏とロス・マクドナルドと生成AIと

昨日の夜,仕事帰りにバス停で何かを貼っている二人組を見ました。
おそらく,10月からダイヤ改正で新しいバスの時刻表に張り替えていたのでしょう。
と言うことで,今日から10月

10月の話ではなく,先日9月最後の日曜日に,毎月最終日曜日に楽しみにしている村上春樹さんの「村上 RADIO」を聴きました。

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その最後に,こんな話がありました。

さて,今日のお言葉はアメリカのハードボイルド・ミステリーの作家,ロス・マクドナルドさんの言葉です。
というか,正確に言えば,彼の創作した私立探偵リュウ・アーチャーさんの言葉です。
どの小説に出てきたか思い出せなくて,正確な引用ではないかもしれないけど,こんな内容の言葉でした。

<カリフォルニアには季節がないと不満を述べる人がいる。カリフォルニアにもちゃんと季節はある。それを感じとることのできない人がいるだけだ>

うーん,ハードボイルドですねえ。でも筆者のカリフォルニアに対する愛のようなものがきっぱりと感じられて,良いです。
僕はロス・マクドナルドの書いた全小説,若い頃に完読しました。
上質な文章を書く人で,素敵な言い回しが各所に出てきます。
それではまた来月。



村上さんのロス・マクドナルド愛が感じられる話ですね。

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この言葉,今回の放送以外にもどこかで読んだような気がします。
彼の初期の「象工場のハッピーエンド」(新潮文庫)にあります。
(帯に新刊とあるので,奥付から察するに昭和61年に買ったと思います。)

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ロス・マクドナルド追悼のページにこんな文章がありました。

「みんなはカリフォルニアには四季の変化がないっていうけど,そんなことはない」とある小説の中で彼(ロス・マクドナルド)は書いている。「不注意な人間がその変化に気づかないだけなのだ」と。

30年以上前の文章と同じことをラジオで言うくらいですから,よほど気に入っているんですね。

村上さんはデビューの群像新人賞の授賞式で,こんなことを言ったと丸谷才一さんは著書「挨拶はむづかしい」の中で書いています。

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(1979年5月8日,新橋第一ホテルにて。贈呈式の村上春樹の受賞挨拶)
「彼はロス・マクドナルドの探偵小説が大好きで,その名探偵リュウ・アーチャーのファンなので,将来小説家になつたら,ぜひ村上龍といふ筆名で書かうと思つてゐた。ところが先に村上龍氏が小説家として登場してしまつたので,村上春樹でゆくしかなくなつて非常に残念だ,といふ話だった。受賞の挨拶でこのくらゐ人を喰つた話ができる新人は,警戒すべきである」

おもしろいエピソードですね。

最後に,どうしても気になること。

「カリフォルニアには季節がない」云々という言葉はロス・マクドナルドのどの小説に出てくるのか?
または,本当にそんな文章が存在するのか?


ちょっと生成AIに訊ねてみましょう。

すると驚きの結果が。

・ロス・マクドナルドの探偵ルー・アーチャーに関する特定の引用「カリフォルニアに季節はない」は、提供された情報源には明記されていませんでした。しかし、ロス・マクドナルドと彼の代表作であるルー・アーチャーシリーズについては、カリフォルニアを舞台とした魅力的な情報がたくさんあります。

・ルウ・アーチャーに関する具体的な情報や「カリフォルニアには四季の変化がない」という記述が、提供された情報源には含まれていません。そのため、ルウ・アーチャーがどのような人物で、なぜそのような発言をしたのかについてはお答えできません。

・ロス・マクドナルドがカリフォルニアに四季の変化がないと言ったかどうかについては、確認できませんでした。

・ロス・マクドナルドが生み出した架空の探偵、ルー・アーチャーに関する質問ですね。「カリフォルニアに季節がない」という言葉は、アーチャーのシリーズの舞台となるカリフォルニアの多様な風景や、物語が描く人間の感情の複雑さを暗示しているのかもしれません。

・カリフォルニアには四季がないという表現は、冬でも温暖な地域が多いことから来ているのかもしれませんね。しかし、実際には地域によって様々な気候があります。

・アーチャーの物語の舞台であるカリフォルニア南部は、四季がはっきりしないと言われることもありますが、彼の作品では気候が物語に影響を与えることもあります。例えば、『The Underground Man』は、ロサンゼルスで熱い風が吹く描写から始まり、大規模な山火事へとつながっていきます。

・おっしゃるように、カリフォルニアには四季がないというのはよく言われる表現ですね。ロス・マクドナルドの探偵小説に登場する「ルゥ・アーチャー」という探偵も、まさにそんなカリフォルニアを舞台に活躍しています。


んー,何度聞いても作品名どころか,ロス・マクドナルドの小説群に出てきたかどうかも怪しい

となると,これは村上さんの思いこみか何かか

村上さんが高校時代に初めて買ったペーパーバックの原書の1冊がロス・マクドナルドだそうです。

全作品を読んで調べるしかないけど,それは無理だなあ。



この記事へのコメント

2025年10月01日 07:32
おはようございます。

 ロス・マクドナルド、懐かしい名前ですねぇ…
 「動く標的」は本も読んでいますが、映画の方も見ています。ポールニューマンが男っぽくて好きでした。たしか、映画の「動く標的」は二作出ていたと思うのですが、両方見てしまったので、今では内容がごっちゃになっています。あれ、オープニングの映像だったと思うのですが、、、安アパートの一室で目覚め、起き抜けのコーヒーを飲もうとしたのだけど、コーヒーが切れていて、ゴミ箱に捨ててあった出がらしのコーヒーを再度ドリップして飲む、というシーン、この男くささが大好きなシーンなのですが、これって「新・動く標的」の方だったろうか?
2025年10月02日 05:35
あきあかねさん
おはようございます。
「動く標的」読んでいないし,見ていないんですよね。
ただ,この作品の中では Lew Archer はなぜか Lew Harper という名前の探偵になっています。
これはニューマンが「ハスラー」以降,Hにこだわったからだとか,Lew Archer という名前の版権の問題だとか言われているようです。