間違いを探せ(1) 漢字編

前回も書いた村上春樹さんの月一回のラジオ番組「村上 RADIO」から。

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村上さんのところに埼玉県の男性(62歳)からこんな質問が来ました。

いつも楽しく拝聴しています。
私はペン字練習に村上さんの小説を書写しているのですが,同じ作品の中で,例えば「入って」という漢字表記が,「はいって」と平仮名表記になっています。それも,すぐそばの箇所です。
そして,その類いのことが,特定の作品に限らず,あちこちの作品で見られます。
何か使い分け方法をご自身で決めておられるのでしょうか?


小説を書写しているからこそ気づくことですね。
同じ作品の中に「入って」と「はいって」が混在していることへの質問です。

それに対しての,村上さんは返事は・・・

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はあ,ペン字の練習に僕の小説の文章を書写しておられるんですか。
なんか写経みたいだけど,お経ほどありがたくないんじゃないかな。
僕としてはちょっと不安になります。人格に悪い影響が出ないといいですけどね。

はい,僕はたしかに同じ「入る」でも,漢字の「入る」と,平仮名で開いた「はいる」の両方を使いますね。
僕はパソコンのソフトを使って書いているので,どちらがそのときの優先変換になっているかで,漢字の「入る」になったり平仮名の「はいる」になったりします。
意識してどちらかに揃えるときもあるし,意識して揃えないときもあります。
そのときの気分次第です。
平仮名のほうが字面が滑らかに見えるときもあるし,逆の場合もあります。
どっちでもいいやというときもあります。
しかしペン字の練習に使われているかもしれないと思うと,なんか緊張しちゃいますね。
仕事机の前で思わず姿勢を正してしまったりして。


意識するかしないかは「そのときの気分次第」が答えでいいのかな。

こういうのって,一度気にするとずっと気にしてしまうんでしょうが,私は気になったことはないし,編集者もスルーしているのであまり大きな問題ではないんでしょう。


ところが,世の中には公文書なるものがあって,ここでは公用文として一定の表記の仕方が決められています。
お役人さんの拠り所になる書籍もあります。

最新公用文用字用語例集 改定常用漢字対応 増補版 - ぎょうせい公用文研究会
最新公用文用字用語例集 改定常用漢字対応 増補版 - ぎょうせい公用文研究会

用字用語 新表記辞典 新訂五版 - 天沼 寧, 加藤 彰彦, 鈴木 仁也
用字用語 新表記辞典 新訂五版 - 天沼 寧, 加藤 彰彦, 鈴木 仁也

学校現場でも,こういう書籍が各種の便りや通信票などでも拠り所になります。
学校の文書が古くさい書き方だな,と思われたら,そういうことです。

そんな本には,間違えやすい例をクイズにしているものもあります。
どこが間違いか,探してみてください。

1.君の言っていることは,責任転化に過ぎない。
2.急に子供が熱を出して,出張からとんぼ帰りした。


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答えは・・・



1.「責任転」。これはよく試験に出るそうです。公務員試験?

2.「とんぼり」。空中回転を意味して,転じて,すぐに引き返すこと。


こういうのって,クイズですと言われれば注意しますが,普段の生活では見逃してしまうかもしれませんね。

ちなみに,私は公文書以外では「子供」は「子ども」と書いています。



この記事へのコメント

2025年10月02日 07:11
おはようございます。

 私は、同じ作品内の表記は統一するようにしています。そう言いながらも、同じ単語で漢字表記と仮名表記を使い分ける場合もあります。そのひとつが「言う、いう」です。
 前出の様に、実際に”口に出して言う動作”が伴う場合は漢字書にしますが、”そういうような事柄”ではなく、代名詞的な使われ方の場合は平仮名書きにします。
 他にも有るのですが、今はちょっと思い出せないので…
2025年10月03日 06:20
あきあかねさん
おはようございます。
「言う」「いう」の使い分け,わかります。私も変換されたとき「?」と思うこともあり,直すときもあれば,まあこれでもいいかとそのままにしてくこともあります。手書きを最近しないので,これは機械任せのある意味,退化なんでしょうか。
コメントの中に「有る」を使われていましたが,私は全部ひらがなかなあ。「ある」「有る」「在る」,難しいですね。